映画と本の感想ブログ「映画の本だな」

いつかディズニー映画を英語で観るために頑張るブログ。

映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」

You know, if you put your mind to it, you can accomplish anything.

映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー

 

”あれは、とにかく楽しい娯楽作品だったのが裏目に出て、

 SF作品としてはきちんと評価されていないと思います。”

書籍「SF映画術 ジェームズ・キャメロンと6人の巨匠が語る

 サイエンス・フィクション創作講座」

ジェームズ・キャメロン 著

阿部清美 訳

 

映画"Back to the Future"

1985年

ロバート・ゼメキス 監督

 

 引用文の通り、確かにこの作品には、

ジャンルを忘れて観る人を没頭させる力がある。

とんでもない吸引力の持ち主です。

タイムトラベルをモチーフにした名作は数多くあれど、

その著名度と人気度では他の追随を許さない映画、

バック・トゥ・ザ・フューチャー」。

 続編が2作品あり、全3部作のシリーズものですが、

今回ご紹介するのは第一作目です。

歴史改変SFの醍醐味でもありますが、過去を変えて現在が変わり、

未来からの来訪者が現在を変えて……を繰り返すと、話が複雑になり、

ある段階で脳が「意味わかんなくなってきた」とギブアップしてしまうのです。

2作目以降も面白いのですが、脳の容量があんまり大きくないコザクラには

ちょっと手に負えない情報量なんですよね。

ちなみに、Wikipediaの「バック・トゥ・ザ・フューチャーシリーズ」の

「過去の変異点について」に時間軸とタイムトラベルのタイミングを

まとめた表があります。

こういう風に図式化して物事をまとめられる人って、本当に頭がいいよな。

羨ましいぜ。

 

 さて、題名の「バック・トゥ・ザ・フューチャー:未来へ戻れ」とは、

トラブルから、時間旅行で過去の世界へ旅立ってしまった主人公:マーティの

冒険の目的を一言で表わしたものです。

車を改造して製作されたタイムマシンに乗って、

たどり着いた先は30年前の過去の世界。

そこには、自分と同じ年頃の両親の姿が。

 マーティは、タイムマシンの製作者であるブラウン博士(通称ドク)を

探しだし、事情を説明。

はじめは真面目に取り合わなかった博士も、自分しか知り得ない事実を

初対面のマーティが言い当てたことで、

未来の自分の発明が成功したことを確信します。

それから2人は、マーティを未来へ戻すために準備します。

 しかし、ここで大きな問題が発生。

マーティは、両親の出会いを意図せず邪魔してしまい、

2人が恋仲になる未来がなくなってしまったのです。

2人が出会わなければ、マーティは生まれない。

つまり、マーティの存在は消えてしまう?

 慌ててマーティは、両親をくっつけるべく、奮闘するのですが、

何と母親は父親ではなく、マーティに恋してしまっていて……!?

 

 コザクラは、ここですでにこんがらがっているんですけど、

そもそも2人がいたからマーティが生まれたのに、

そのマーティが2人の出会いを引き裂くってどういうこと???

この論理的パラドックスは「親殺しのパラドックス」の名で知られており、

SFとしての回答は「並行世界ができる」「影響を受けた人物だけが全消滅する」

などありますが、そもそもタイムトラベルがサイエンス・フィクションの域を

出ないため、論理ゲームの勝敗はつかないままです。

 あ~。 頭の中がぐるぐるする~。

 

 こうやって文章にすると難解な問題なのですが、

緩急あるリズムと、絶妙な音楽の配置が軽妙な本作は、

実際に鑑賞すると、そんな細かいことはどうでもいいくらいにスピーディです。

上映時間:116分と決して短くはないのですが、

シーンに無駄がなく、畳みかけるような展開の連続なので

パラドックス問題とか、考えている暇がありません。

ハラハラドキドキして、映画に夢中になっている内に

エンドロールを迎えてしまいます。

 そこで流れる主題歌は、ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースの

「パワー・オブ・ラヴ」。

学校の催し物の最中に流される「懐かしい洋楽セレクション」の中に

潜んでいそうなイメージですが、間違いなく名曲です。

 

 映画も主題歌も、歴史に残る作品です。

 観たことがない人はもったいない!!

 ぜひ、一度観てみてください。

 

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ディズニー・アニメ映画「白雪姫」

Magic Mirror on the wall, who is the fairest one of all?

ディズニー・アニメ映画「白雪姫」

 

”鏡よ、壁の鏡よ

 国中で一番美しい女はだれ?”

書籍「グリム〈初版〉を読む」

吉原高志/吉原素子 編集

 

映画"Snow White and the Seven Dwarfs"

1937

デイヴィッド・ハンド 監督

 

 最近、ウォルト・ディズニーの伝記本を2冊ほど読みました。

そしたら、無性に観たくなってしまい、TSUTAYAに走ったというわけです。

 ディズニーの長編映画第1作目、映画「白雪姫」。

 歴史を変えた映画です。

グリム兄弟の童話を原作に、世界初のカラー長編アニメーション映画として

世を驚かせ、今日振り返ってみても、目覚ましく、世に二つとない名作です。

 

 アメリカでの公開は、1937年――歌手の美空ひばりが、生まれた年です。

第二次世界大戦を挟んで、遅れて1950年に日本でも公開され、

アメリカと日本の国力の違いを見せつけました。

 漫画家の手塚治虫が、ディズニー映画に並々ならぬ思いを抱いていたことは

有名ですが、「白雪姫」に関しては、映画館で50回以上観たという

嘘みたいな説が出回っています。

多分、本当なんでしょうね。

ちなみに、一番影響を受けた映画「バンビ」については、

80回以上鑑賞したそうで、いやはや、本当に天才ってヤツは、

悪くすると「視野が狭い」とでも言われそうなほどに、

こうと決めたら一本道ですね。

 コザクラも子どもの頃は、毎日同じ映画を観ていました。

飽きるってことが、なかったんです。

でも大人になった今は、毎日じゃなくても、

一度観た映画をもう一度観るなんてことは、滅多にありません。

 なんなんでしょうね。

あの頃の情熱って。

 手塚先生は、大人になっても、あの時の「熱」ってものを

ずーっと持ち続けていたんでしょうね。

 

 さて、本当は怖くて有名な「グリム童話」の中でも、

知名度の高い作品「白雪姫」。

今さらあらすじを書くのもバカらしいですが、

念のため書いておきますと、継母からのいじめにあったお姫様が、

継母から命を狙われ、7人の小人の住まいに隠れるも見つかり、

仮死状態になるが、真実の愛のキスで目覚め、

王子様と一緒にお城に帰る――というお話です。

 でも、昔話が口伝えで広まったように、

同じ題名の童話でも、子細が異なることがあれば、

異なる名前・設定でも似たようなストーリーのものもあります。

もちろん「白雪姫」にも様々なバージョンがあります。

 引用した書籍によると、白雪姫が目覚めるきっかけもいくつか違いがあり、

咽にひっかかったりんごの欠片を、医術で取り除いた場合もあれば、

偶然、白雪姫の体に振動があって飛び出した場合もあります。

なお、本著では語られていませんが、

「真実の愛のキスで目覚める」というのは、

おそらくディズニーの創作でしょう。

 

 ディズニー作品を観た後で、原作に興味を抱いて書籍を開くと、

元になったお話が、あまりにも薄味でびっくりすることがあります。

衣をつけて揚げて、砂糖をまぶしたお菓子の味に慣れてしまうと、

素材そのままの味――果物の酸味や主張の激しくない甘み――が、

妙に感じられるように、「こんなものなの?」と途方に暮れます。

咽につまったりんごの欠片が吐き出されるより、

恋しい人の口づけで目覚めた方が、何倍もロマンチックです。

 この手の書き換えが、原作の旨味を損なわせている、という意見もあります。

そうですよね。

別物になっちゃってますよね。

 でも、原作が昔話であり、語る人によって力の入れるポイントが変わったり、

登場人物が増えたり減ったりすよるような性質の物語なので、

描いた人によって変化するのは、自然なことではないかな、と思います。

そして、これだけの長きに渡って、世界中で鑑賞されてきた結果から言えば、

ウォルト・ディズニーの語り口は、それだけ受け入れられたわけです。

そりゃ、面白いわけだわ。

 

 さて、2024年にはディズニーから実写映画の「白雪姫」が公開されます。

 現代のディズニーの語り手の手腕、見せてもらおうじゃありませんか!!

 

【映画のキーワード】

#ディズニー #童話 #メルヘン

 

 

 

映画「ピアノ・レッスン」

What a death. What a chance. What a surprise.

映画「ピアノ・レッスン

 

”「そんなことをしたって、どうにもならん」と青ひげは言いました。

 「死なねばならぬ」

 そして片手で髪の毛をつかみ、もういっぽうの手で太刀をふりかざして、

 今にも首を打ちおとそうとしたのです。”

書籍「いま読む ペロー『昔話』」

工藤庸子 著

 

映画"The Piano"

1993

ジェーン・カンピオン 監督

 

 !!注意!!

 この映画には、男女のセックスシーンと、指の切断シーンが含まれます。

 エロ・グロが苦手な方は、ご注意くださいませ。

 

 事前情報が、ピアノのレッスンを通じて男女が恋に落ちる、というもの

だけだったので、観ている内に「あれ……なんかちょっと、予想してたのと違う」

となり、夫が斧を片手に妻に迫るシーンでは、内心、悲鳴をあげていました。

グロは苦手なので、思わず目をつぶっちゃいました。

だって、本当に切り落とすとは思わなかったんだもん……。

 もっと、繊細で叙情的な作品かと思っていました。

眼差しで会話をするような。

 いや、確かに、主人公の女性:エイダは話せないので、

感情が瞳に表われているのですが、これはそういう作品ではないと思います。

ピアノを通して、心の交流を行い、互いを知り、恋に落ちる――

――そういうエモーショナルな物語ではなく、

官能小説の映像化でした。

ハーレクイン小説的空気感と言ってもいいけど、

どっちかと言うと、男性向けの官能小説の雰囲気に近いものを感じます。

もしくは、男性が書いた官能小説。

ちなみに、カンピオン監督は女性です。 念のため。

 監督の意図は計り知れないけれど、一視聴者としては、

この映画を観た後で、一番印象に残るのが、

エロシーンと身体切断シーンと身投げシーンでした。

性行と暴力と自殺。

やっぱりこれは、官能小説だと思うんだよな。

身体と精神の支配、そこからいかにして自由を得るか――

――映画のテーマも、そこにあるんじゃないかと思います。

 

 ところで、本作には、ある童話の陰がちらついて見えます。

 グリム童話やペロー童話に登場する、恐ろしい登場人物たちの数々……。

 中でも、彼の知名度と恐ろしさは、突出しています。

男性の女性不信を体現し、女性の好奇心を死をもって償わせる男――

――そう、「青ひげ」です。

 

 作中の劇で「青ひげ」が演じられています。

ここが伏線になっていて、エイダの浮気を知った夫:スチュアートが、

劇で青ひげが、新妻の首を斧で斬ろうとしたのを思い起こさせるかのように、

斧でエイダの指を斬り落とします。

ピアニストの指を!!(憤慨)

 劇では影絵を使って、青ひげが妻を殺す、残酷なシーンを表現していました。

 でも、練習の時はなぜか手首を狙っています。

本番で首を狙って斧を振り上げているところを見ると、

影絵でうまく表現できるかのテストだったので、手に狙いを定めていたようです。

しかし、このシーンがあるおかげで、観客はスチュアートが

エイダの腕を掴んで切り株に固定し、斧を振り上げる時、

手首ごと斬り落とされるエイダを想像して、ぞっとします。

 指にしろ手首にしろ、恐ろしいシーンであることには間違いありませんが、

ピアノを自分の声代わりにしているエイダに対する憎悪の深さが、

類似のシーンを事前に挿入しておくことで、

本来は指1本では済まないことを、示唆しているように感じました。

 

 さて、サウンド・トラックを担当したのは、

イギリスの作曲家、マイケル・ナイマンです。

メインテーマとして、作中で繰り返し使用されているピアノソロ曲

「楽しみを希う心(たのしみをこいねがうこころ)」があり、

多くの人が、一度は耳にしたことがある曲だと思います。

 それこそ、ピアノを習っている方は、

レッスンの課題曲として取り組んだ方も多いのではないでしょうか?

 楽器の習得には、時間がかかります。

生まれ持った素質も関係しますが、どれだけ才能がある人だって、

練習なしに上手に弾けるようにはなりません。

 長く険しいピアノ・レッスンの道。

「この映画の主題歌を弾けるようになりたい!」といった、

目標を持つのもいいかもしれませんね。

 

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#恋愛 #音楽 #ニュージーランド

 

 

 

ディズニー・アニメ映画「シンデレラ」

Sala-gadoola-mechicka-boo-la Bibbidi-babbidi-boo

ディズニー・アニメ映画「シンデレラ」

 

”それにしても、シンデレラという、さまで人類の運命には関係のなさそうな

 単純な昔話が――なにもシンデレラとは限らず、大方の昔話について

 言えることだが――、人類の発祥のころから綿々と語り伝えられ、

 洋の東西を問わず世界のいたるところでさまざまのヴァリエーションを

 もって広がりながら、ほぼ同じ問題を問題にし、ほぼ同じ解決を提出している

 のこそ、その起原どこにあるかとか、東洋と西洋の話の差異と同一は

 どこにあるかといった問題よりも、より以上に興味あることではないのか。”

書籍「世界のシンデレラ物語」

山室静 著

 

映画"Cinderella"

1950

ウィルフレッド・ジャクソン/ハミルトン・ラスク/クライド・ジェロニミ 監督

 

 英語では「シンデレラ」、フランス語では「サンドリヨン」、

和訳では「灰かぶり姫」――これは、主人公が下働きをさせられ、

台所の隅でかまどの灰を被っていたことから名づけられています。

 バレエやオペラの演目としても馴染みが深いこの話は、

現在でも映画や舞台の題材に度々取り上げられ、

新しい物語として紡ぎ直されています。

継母や義姉たちからのいじめにもめげず、最後には玉の輿に乗るという

サクセスストーリーは、非常に人気があり、

日本も含め、世界中で類似の昔話が見受けられます。

 世界中に分布する「シンデレラストーリー」について取り上げているのが、

今回引用した書籍「世界のシンデレラ物語」です。

なるほど。

世界には様々な昔話が存在しますが、「シンデレラ」は特に好まれ、

また歴史の波にさらわれることなく、現代まで生き残ってきた

「有名かつ人気作品」であるようです。

 逆境を克服する若い女性を主人公にした物語に、これほど人々が夢中になり、

自らの夢を託したのは、なぜだったのでしょうか。

 

 1950年に公開された当時、ディズニー社はなかなかヒット作を出せず、

正に崖っぷちの状態でした。

再起をかけて世に送り出したのが、この映画「シンデレラ」。

大ヒットを記録し、ほっと息をつくことができたわけです。

 ウォルト・ディズニーは本作の構想に二十数年かけており、

かなり初期の頃から、「シンデレラ」のアニメーション化を考えていました。

自身の才覚と愛嬌で、映画史に名を残したウォルト・ディズニー

彼自身、シンデレラと同様に、逆境を跳ね返して成り上がった、

サクセスストーリーの体現者でありました。

 作中歌の「ビビディ・バビディ・ブー」は、受賞こそしませんでしたが、

アカデミー歌曲賞にノミネートされました。

今では誰もが知っている、あの曲です。

 流行歌は時代を象徴しますが、これだけ幅広い年代に渡って知られている歌は、

何と呼んだらいいのでしょうか。

お年寄りから子どもまで、皆が知っている歌というのは、

それほど多くはありません。

「ビビディ・バビディ・ブー」は、世界を変える大きなパワーを持った歌であり、

その歌が含まれた映画「シンデレラ」には、

そういう力があった、ということでしょう。

 

 今回、映画を見直して、改めて思ったことがあります。

それは、「ディズニーヒロインの中でも、ドレス姿が抜群に美しい」ということ。

 ディズニー作品のヒロインたちは、ドレスで着飾った姿で作中に登場し、

観客――特に、幼い少女――の心に強烈な印象を与えていきます。

本作の主人公:シンデレラに限らず、皆、美しいのですが、

シンデレラは頭一つ抜けている感があります。

 ほとんど白に近い薄青のドレスは、装飾が少なく、

クラシカルというより、モダンな印象です。

首に巻かれたチョーカーだけが黒色で、これも装飾のないシンプルなもの。

全体としては、すっきりとして都会的な雰囲気です。

しかし舞台は、昔話の常として「昔々のどこかの国(ヨーロッパ)」という設定。

 だからこそ、シンデレラの姿が他の登場人物や背景の人物に交じらず、

くっきりと鮮やかに、浮かび上がって見えてきます。

 ましてや、足を覆うのはガラスの靴。

ビジュアルとしては、完璧です。

ちょっとやそっとの女では、太刀打ちできません。

 完璧過ぎて、いっそ、シンデレラの方が、

フェアリー・ゴッドマザー(妖精のおばあさん)よりも妖精らしく見えます。

 

 ディズニーで一番の美人、ここにあります。

 

【映画のキーワード】

#ディズニー #童話 #落窪物語

 

 

 

映画「007/カジノ・ロワイヤル」

The job's done, and the bitch is dead.

映画「007/カジノ・ロワイヤル

 

”自分が――このボンドが――何年も子供じみた鬼ごっこにうつつを

 抜かしていたあいだに(そう、ル・シッフルのこの比喩はこれ以上ないほど

 正しかった)、真の敵はボンド自身の目と鼻の先で、ひそやかに、冷静に、

 英雄ぶることもなく仕事を進めていたのだ。”

書籍「007/カジノ・ロワイヤル

イアン・フレミング 著

白石朗 訳

 

映画"Casino Royale"

2006

マーティン・キャンベル 監督

 

――あなたの「ジェームズ・ボンド」はどこから?

コザクラにとっては、ダニエル・クレイグ演じる6代目ジェームズ・ボンドです。

 

 イギリスの諜報員としての経験から、

スパイ小説を書いた作家、イアン・フレミング

彼の生み出した、「世界で一番名の知られたイギリスのスパイ」が

コードネーム:007(ダブルオーセブン)こと、ジェームズ・ボンドです。

 1962年に、記念すべき映画化第1作目が公開されて以来、

主演を引き継ぎながら、25作品もの映画作品が作られてきました。

今回ご紹介する映画は、ボンドシリーズの中では第21作目にあたります。

しかし原作小説は、ジェームズ・ボンドがはじめて登場した第1作目なのです。

小説1作目を、映画を20本撮った後で映像化したという事実。

実は、1967年に小説1作目を原作とした映画が公開されているのですが、

なぜかこれがコメディ映画だったのです。

 というわけで、2006年の映画は本来「リメイク作品」となるのですが、

ネット上の評判を見る限りでは、ボンドシリーズに1967年版は含まれない模様。

まァ、仕方が無いのかな?

 

 個人的に「人生初の007」だったことから、

ダニエル・クレイグは、非常に愛着のある俳優さんです。

「推し」……とはちょっと違うのですが、「馴染み深い」みたいな感じ。

「地元に帰ってテレビをつけるとやっている、地方局の番組のキャスター」の

ような「観ていて安心感のある俳優」という立ち位置です。

 ところがキャスト発表当時は、えらいブーイングの嵐だったそうです。

主に容姿(身長、髪色など)の面で、ボロクソに叩かれたらしく、

歴代ボンドが作り上げてきたキャラクター像が崩れるとして、

そりゃあもう凄い剣幕で騒がれまくったんだと。

 ボンド役として当たった今となれば、やっかみも笑い話になりますが、

当時の俳優や制作陣は、さぞや胃が痛かったことと察せられます。

 

 さて、前評判でギャアギャア言われた6代目ボンドの1作目が、

本作「カジノ・ロワイヤル」というわけですが、

これがもう、本当に好き。

原作小説も、大好き。

 好きなポイントを挙げていると切りがないので、

極論を申し上げますと、これは「スパイになる」お話なんですよ。

だから、物語の主人公であるボンドは、映画の終盤間近まで、

「技術も判断も体術もピカイチだけど、ただの公務員」なんです。

それが、裏切りと出会いと別れの後で「一流になる」んです。

「プロフェッショナルになる」お話なんです。

 いや、人殺しにプロフェッショナルもクソもあるかよ、という

倫理の問題は横に置いて、ストーリーの面白さに重点を置くと、

「主人公が困難を経て宝(一人前になること)を得る」という

極めて王道のストーリーになっているわけです。

もちろんここでは、ボンドは「もう誰も信じられない」という、

絶望に満ちた状態で物語(冒険の旅)を終えています。

恋人は死んだし、しかもその死んだ恋人のせいで、

自分の職場や愛する祖国は窮地に陥っています。

バラ色とは言い難い結末。

 でも、望んだ通りの宝物を得て、

幸せな未来に続く結末に繋がる可能性もあった筈です。

どこかでボタンを掛け違えるように、何かがずれていたら、

今も恋人は彼の隣で微笑んでいたかもしれない。

 ボンドの場合は、そうじゃなかった。

それでも、彼の人生は続き、彼は仕事から降りて、

別の――もっと安全な――仕事に就こうとはしませんでした。

決してハッピーエンドではないけれど、

ボンドが敵に背を向けることをせずに、前を向いて歩き続ける姿には、

何かしら明るいものを感じずにはいられないのです。

それを、希望と呼ぶにはちょっと大袈裟だけれども。

 

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#アクション #スパイ #ポーカー

 

 

 

映画「バグダッド・カフェ」

映画「バグダッド・カフェ

 

映画"Out of Rosenheim"

1987

パーシー・アドロン 監督

 

 何も無い空間から、パッと現れるコイン、ハンカチ、そしてバラの花……。

タネも仕掛けもよく知られた、オーソドックスな手品です。

そんな古典的なマジックが、人々の交流を促す映画――それが、

今回ご紹介する映画「バグダッド・カフェ」です。

 日本では1989年に公開され、ミニシアター上映にも関わらず、

数ヶ月のロングランを記録し、ミニシアターブームを引き起こしました。

映画は観たことがなくても、主題歌は聞いた覚えがあるかもしれません。

ジェヴェッタ・スティールが歌唱した「コーリング・ユー」は、

映画を離れて、世代を超え、歌い継がれています。

 大人向けの幻想作品と言ったらよいのか、何しろ独特な作風で、

一度観たら印象に残り、現在でも、レビューでは高評価が目立つ作品です。

 

 実は今回、この映画を観ようと思ったきっかけとなった書籍があります。

それがこれ、「ミッキーマウスの憂鬱ふたたび」(松岡圭祐 著)です。

ディズニーランドの裏側を物語の舞台としたことで、

ディズニーファンや、ディズニーランドに一度でも行ったことがある人の

興味を引きつけた小説「ミッキーマウスの憂鬱」の続編です。

ただし、シリーズものとは言っても、それぞれで独立していますので、

こちらだけ読んでも話が繋がらない、ということはありません。

 小説の中で、他の映画作品と共に本作の名前が挙げられており、

未視聴だったため、気になって、鑑賞することを決めました。

勘の良い方ならお気付きの通り、小説には手品が登場します。

実際に映画を視聴して納得。

なるほど、コレね。といった具合です。

 そんなわけで、映画を観た方には、ぜひ小説を読んでいただきたいです!

逆もまた然り。

どちらも未視聴・未読な方は、お好きな方から手に取ってみてください。

 

 手品って、いいですよ。

人生には、魔法が必要ですからね。

 

 

 

映画「バイオハザード」

You're all going to die down here.

映画「バイオハザード

 

バイオハザードは、次に挙げる三つの条件が関わりあって発生する。

 すなわち、第一は原因となる病原微生物(病原体)の存在、

 第二はその病原体に対する感受性を持つ生物種の個体や集団の存在、

 第三は病原体と感受性ある生物種とを結ぶ

 何らかのルート(感染経路)の存在である。

 原理的に言って、これらの条件のどれひとつが欠けても

 バイオハザードは起こり得ない。”

書籍「バイオハザード原論」

本庄重男 著

 

映画"Resident Evil"

2002

ポール・W・S・アンダーソン 監督

 

 原作となったゲームも有名なら、ゲームとは異なる設定・ストーリーにも

関わらず、実写化した映画も有名になった作品、「バイオハザード」。

ミラ・ジョヴォヴィッチ演じるアリス・アバーナシーが主人公の映画シリーズは、

2016年に全6作品で完結しましたが、

2022年に新シリーズが公開され、その人気はいまだ健在!

ゲームも、本編だけで続編が9作品制作され、

さらには派生シリーズも展開されています。

熱狂的な人気は、衰えることがありません。

 また、コロナウイルスを知った今となっては、

感染から逃れようとする主人公たちや、

研究所を封鎖してウイルスを閉じ込めようとする人工知能の思惑が、

非常に真に迫った作品です。

 

 物語の舞台は、地下の研究施設。

半地下、ではなく完全に地下で、アリの巣にも似た巨大な構造物です。

ここで研究されていたT-ウイルス(「ティーウイルス」架空のウイルス)は、

異なる生物の遺伝子どうしを繋げるはたらきを持っています。

これは、新しい生物を人工的に生み出す際に、役に立つ、ということです。

 製薬会社大手として名を馳せるアンブレラ社(架空の会社)は、

この危険なウイルスを用いて、生物兵器を製造していました。

ところが、何者かの手によって、このウイルスが漏洩してしまいます。

本作の題名でもある「バイオハザード(生物災害)」が起こってしまったのです。

研究施設を支配するメイン・コンピューター:レッド・クイーンは、

この事態を受けて、防衛プログラムを作動します。

その結果、施設内の全職員が命を落とすこととなりました。

 その頃、主人公:アリスは、

見知らぬ屋敷のバスルームで倒れていたところ、目を覚まします。

彼女は、自分がなぜここにいるかも思い出せません。

記憶喪失となった彼女の前に現れたのは――。

 

 コザクラは、原作のゲームをプレイしたことはないのですが、

ゾンビが出てくるクソ怖有名ホラーゲームだということは、知っていました。

今回、映画も人気があるのに、そう言えばまだ観ていなかったな、と思い、

軽い気持ちで見始めたのですが、凄く怖かったです……。

映画を観る前は、「へぇ、映画はゲームとは違うストーリーなんだ。

映画の後で、プレイ動画を探して視聴しようかな」と考えていたのですが、

とてもじゃないけど、今は無理です。

 ちなみに、主演のミラは、

実際にゲームをプレイしてから撮影に臨んだようです。

 でも、ホラーゲームは本当に、プレイする人を選ぶゲームだと思います。

ホラーが苦手な人は一定数います。

コザクラ含め、そういう人達の財布や関心を度外視して、

採算が取れるように制作するのだから、ゲーム制作会社って、

本当に、夢がないとやっていけない仕事だと思います。

ホラーゲームに限ったことじゃないかもしれませんが、

「オレの考えた最恐を見てくれ!」という気持ちがないと、

世に出ることすら叶わないと思います。

 カプコンを代表するサバイバルホラーゲーム「バイオハザード」。

それを原作としながらも、独自にストーリーを作り上げた映画。

 どちらも、作り手の情熱がなければ、ここまで愛され、

怖がれるシリーズにはならなかった筈です。

 

 感じてください、彼らのパッションを!

 コザクラは、しばらくホラーは、休みます(涙)!!

 

【映画のキーワード】
#ホラー #サバイバル #鏡の国のアリス