映画「キャスパー」
”「ダンスがうまいって言っただろ」と少年がささやく。
キャットは目を丸くした。このすてきな海賊の正体に気づいたからだ。
「それから、きみを離さないって」”
書籍「キャスパー」
リサ・ロジャニー 著
中俣真知子 訳
映画"Casper"
1995年
ブラッド・シルバーリング 監督
いわゆる「ハロウィン映画」(ハロウィンの時期になると放映される映画)で、
ゴースト・恋愛・パーティーと3拍子揃った映画です。
かわいくて人なつっこいゴーストのキャスパーが、
とある事情で友達をつくれない、年頃の女の子と友達になる……というお話です。
映画を通して観たことはなくても、丸っこいフォルムの愛らしいキャスパーの
姿を見たことがある人は、多いかもしれませんね。
大阪のUSJでは、ハロウィン時期のグッズ売り場に、
キャスパーデザインのお土産が販売されているようなので、
「ハロウィンにもってこいの映画キャラクター」という認知はされている模様。
恐怖の対象であるゴーストなのに、その中身は、
友達募集中のかわいい男の子だってところが、実にあざといキャラクターです。
しかし……そう、キャスパーは男の子なのです。
心霊学者の父親――コメディ映画にありがちな設定として、変わり者の父親――に
連れられて、ゴーストの出る屋敷にやってきた娘のキャット(猫じゃないよ。
愛称だよ)――これまたありがちな設定として、大人びている――。
長年、意地悪なおじさんたち(彼らもゴースト)と一緒で、
広い屋敷で遊び相手もおらず、寂しかったキャスパーは、
テレビに映ったキャットを、一目見て気に入ります。
そして、彼女の父親:ハーヴェイ博士が仕事の依頼で、
自分の取り憑いている幽霊屋敷に、やって来るように仕向けました。
ところが、新しい学校で出会った、かっこいい男の子に夢中なキャットからすると
自分につきまとうキャスパーは、少々鬱陶しい存在。
果ては、件の男の子が屋敷を訪れると、キャスパーは嫌そうに眉をしかめ、
男の子を小馬鹿にしたような態度をとります。
ここ……切なぁ~~い!
キャスパーがほしかったのは、友達。
それは間違いありませんが、実際にはキャスパーは「かわいい女の子」を
選んで自分の屋敷に呼び寄せています。
男女間に友情は存在するか? ――否。
ゴーストと言えど、キャスパーも男の子なわけです。
しかも、恋に恋するお年頃。
恐らく、生前も大して恋愛経験はなかった筈(まだ子どもだしね)。
ということは、キャスパーにとってキャットは……初恋……?
いやだこれ、切なぁ~~~~~~い!!!
ネタバレしますと、ラストでキスするんですよ、この2人!
普通の話なら、ハッピーエンドなわけ。
「小さな恋のメロディ」エンドなわけです。
ところが、キャスパーはゴーストなんですよ。
もうとっくの昔に死んでしまっていて、未練(父親を残して自分が先に死んだため
父親が心配だった)ゆえに現世にとどまっていた、イレギュラーな存在なのです。
だから本当は、成仏することを望まれる存在。
……だけど。だけどさあ……。
成仏できないよ!
キャットへの未練がありまくりだよ!
映画のエンディングが、屋敷の皆で明るく楽しんでいるシーンだから
何だか誤魔化されていますけど、これ、全然ハッピーエンドじゃないからね!?
あ。
今、「誤魔化されている」って言ったけど、やっぱ無し。
だってコザクラは、小学生の時にこの映画を観て
「えええ~~!? これで終わり!? これでいいのか、キャスパー!
お前この先、キャットが大人になって、お前以外の誰かと恋に落ちたり
結婚したり子ども産んだりして、年とって死んでいくまで、
ずーっと子どものゴーストのままで一緒にいるつもりか!?」
とビビった覚えがありますもの。
全然、誤魔化されてなかったわ。
今回、改めて見直したけど、やっぱ情緒不安定になるわ、この映画……。
切ない……切ないよぉ……。
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