映画と本の感想ブログ「映画の本だな」

いつかディズニー映画を英語で観るために頑張るブログ。

映画「BFG: ビッグ・フレンドリー・ジャイアント」

At one point, someone...someone called me the Big Friendly Giant.

映画「BFG: ビッグ・フレンドリー・ジャイアント」

 

”わしは変わり者のオ・ヤサシ巨人だよ。

 この巨人国広しといえども、ニンゲンマメを食ったことがないのは、

 このわし――オ・ヤサシ巨人、ただ一人だろうよ。

書籍「オ・ヤサシ巨人BFG」

ロアルド・ダール 著

中村妙子 訳

 

映画"The BFG"

2016

スティーヴン・スピルバーグ 監督

 

 人食いのモンスターが登場する子ども向けファンタジーと言うと、

トミー・ウンゲラーの絵本「ゼラルダと人喰い鬼」など

怖くて不思議でブラック・ユーモアに溢れた作品が思い浮かびます。

 今回取り上げる映画及び原作本に登場する人食いモンスターは、

鬼ではなく、巨人。

それも、「大きいお友達の巨人さん」なのです。

 

 原作は、発想・言葉遣い・オチの付け方、どれをとっても奇才天才の仕事ぶり。

実は皆のトラウマメーカーとして、子どもの心に深く長い傷を残すことで

有名(?)なロアルド・ダールの1作です。

 ロアルド・ダールノルウェーの両親のもと、イギリスで生まれ育ちました。

イギリス空軍の戦闘機パイロットとして第二次世界大戦で従軍し、

撃墜され、エジプトの砂漠に不時着。

長く生死の境をさ迷いましたが、なんとか生還しました。

戦後、この時の経験をもとにした作品で作家デビューします。

 人生、どこでどんなきっかけを拾うか、わかったもんじゃありませんねぇ。

 そういえば、作家のアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ

飛行記録に挑戦中にサハラ砂漠に不時着し、その経験から名作を生み出しています。

そう、かの有名な「星の王子さま」です。

 

 さて、舞台はロンドン。 それも孤児院。

ディケンズの影響か、ロンドンの孤児院ほど

惨めで残酷な場所は無いように思えます。

しかし同時に、一定数の反骨精神溢れる子どもたちを、

創作世界上で世に送り出してきたことも事実です。

 そんなわけで、本作の主人公:ソフィーも

ロンドンの孤児院に相応しい性質を兼ね備えております。

巨人に捕まった彼女は、会話を繋いでなんとか生き延びようと

頭を回転させます。

恐怖で震えて言葉をなくすのではなく、とにかく喋って、

その間に知恵を働かせるのです。

 うーん。

ロアルド・ダール作品の主人公陣の一筋縄ではいかないこの感じ、

個人的には凄く魅力的です。

優等生でもなければいい子ちゃんでもない。

他人の失敗を笑い、いじめっ子をいじめ返すこのタフネスさに、

実にイギリス的なウィット(即座に働く知恵、とんち)を感じます。

 原文を読んだことはないのですが、原文ではさぞ様々な韻を踏み、

言葉を駆使して言語で遊びまくっていることだろう、と推察しています。

日本語訳がこれほど――過剰過ぎて、本筋が一瞬飛んでしまうほどに――

言葉遣いに神経をつかっていることから、翻訳家の皆さんの苦労が偲ばれます。

 

 ……ただ、非常に残念なことですが、

言葉遊びは本の上でこそ楽しいものです。

映像化する時は、実際の文章を見るのではなく、台詞の中で聞くことになります。

 相性……悪いんですよねぇ……。

 映画は映画として楽しむとして、やっぱり本で楽しむ以上の楽しみ方は

ないよな、とこの作品で改めて思いました。

 しかし、映像化されて「素敵!」と思ったシーンがあります。

それは、優しい巨人:BFGとソフィーが、夢の国へ向かうシーン。

大きな池に飛び込むと、水面に映った風景の中に、BFGの姿が映ります。

勇気をだしてソフィーも続きます。

池に飛び込むと、重力に逆らって体がぐるり!

目を開けると、先程までと同じ風景の中に立っていました。

いえ、正しく言うと違います。

ここは夢の国。

その証拠に、辺りには様々な色をきらめかせながら宙を飛ぶ、

「夢」が実体化しているではありませんか!

 この映像美は、映画ならでは。

スピルバーグ監督の手腕を拝見できます。

 

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