映画と本の感想ブログ「映画の本だな」

いつかディズニー映画を英語で観るために頑張るブログ。

映画「幸せのちから」

Are you happy?

映画「幸せのちから

 

”するべきすることをしよう、とウィリアムズ牧師は説いた。

 毎週日曜日の説教でも、必ず、いろいろな話題に絡めて、そのことが説かれた。

 口で言うだけでなく、実行しよう。

 そして前へ進もう。

 大きな前進でなくてもかまわない。

 わずかな前進でもいい。

 前へ進もう。”

書籍「幸せのちから

クリス・ガードナー 著

楡井浩一 訳

 

映画"The Pursuit of Happyness"

2006

ガブリエレ・ムッチーノ 監督

 

 引用文は、グライド・メモリアル・ユナイテッド・メソジスト教会

主人公でもある著者:クリスに勇気を与えた、

セシル・ウィリアムズ牧師の言葉とクリスの心の声です。

この教会は、アメリカはサンフランシスコの中心部である

テンダーロイン地区に位置しています。

 治安の悪さで有名な地区で、ガイドブックを開くと「危険地帯」とされています。

また、再開発地域として税制優遇措置をとったため、TwitterUberなどの

大企業の本社が置かれており、その様相はさながら天国と地獄。

ホームレスが寝起きする公園を通り抜けてビルへ入っていく会社員の

年収が1,000万円超え……なんてことも珍しくない、所得格差の大きい都市です。

 

 原作は、一時はホームレスとなるも、ついには自らの投資会社を立ち上げ、

億万長者となったクリス・ガードナーの伝記本です。

映画は原作を縮小しつつ、シングルファザーが妻を失い、家を失い、

さらには商売道具を失いながらも、株式投資の世界へ飛び込んで

九死に一生を得る話としてまとめています。

まさにアメリカン・ドリーム。

 映画を観れば「きっつ……」とクリスの前に立ち塞がる困難に辟易してしまいます。

が、原作を読むと現実はもっと「きっつい」ことがわかります。

ただただ金銭的に苦しい、というより貧しくて生活に支障がでている、

貧困という状態が、コザクラには想像するしかないのですが、

なんかもう……言葉にならないくらいひどいのです。

さらに言えばこの状態は、本人の実力や努力でどうなることよりも

環境や遺伝など、運命ともいえるどうにもならないことが

強い影響力を与える中、生み出されています。

 2021年に流行語大賞にノミネートされ、老若男女問わず賛否両論だった

「親ガチャ」という言葉があります。

子どもが親を選べない――親の人格、思想、経済状態が、

子どもの人生にダイレクトに影響し、それは何人にも変えられない――ことを

スマホゲームの「ガチャ」に例えた皮肉と諦念を感じさせる単語です。

 映画の中でクリスは、ルービックキューブを見事に解いてみせます。

数に強いことを売りにしていた彼にとって、数学は得意分野。

パズルも医療機器の修理もこなします。

でも彼には家がありません。

大学に行っておらず、仕事はうまくいきません。

 これは本当にクリスの自由意志の結果であり、

彼の貧困は彼に全責任があるのでしょうか。

 責任の所在がどこにあるにしろ、一度でもホームレスというどん底まで

落ちてしまうと、そこから這い上がることは大変難しいのが現実です。

 

 家が無いまま夜の街をさ迷うクリスの手には、幼い息子の手が握られています。

主演:ウィル・スミスの息子:ジェイデン・スミスが、

クリスの息子役を演じており、親子で出演しているのです。

そうとは知らずに観ており、上手な子役だな、と感心しきりでした。

 実はこの映画には、カメオ出演があります。

クリス・ガードナー本人が、ラストで主人公たち親子とすれ違っています。

ここはさすがに違和感があって、何かあるな、とわかりました。

たくましい体格の男性が、堂々と画面を突っ切っていきます。

 どれほど心折られる体験をしようと、最後まであがき続け、

最終的には「幸せへの切符」となる「投資会社の仕事」を手に入れたクリス。

本当に、事実は小説より奇なり、です。 

 

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#伝記 #ファミリー #キャプテン・アメリカ