ディズニー・アニメ映画「アラジン」
”「なんなりとご用をおいいつけください。
あなたのしもべが参上しました。
わたしはランプをお持ちのかたのしもべです!」”
書籍「アラビアン・ナイト アラジンと魔法のランプ」
斉藤洋 著
映画"Aladdin"
1992年
ジョン・マスカー/ロン・クレメンツ 監督
この間、カラオケに行ったんですよ。
皆さん、1曲目って何を歌います?
私は椎名林檎さんの「丸の内サディスティック」です。
それで、1曲終わって一息つくじゃないですか。
見ますよね、ランキング。
最近は何が流行っているんだろ~、という気持ちで確認しますよね。
デュエットランキングの上位にいつもいるんですよね、
映画「アラジン」劇中歌の「ホール・ニュー・ワールド」が。
なんでひとりカラオケなのにデュエットランキングまで目を通しているのかは
さておき、やはりディズニーソングの中でもこの曲は鉄板ネタなんだな、
と思った次第であります。
映画「アラジン」を観た後で、元ネタの「アラジンと魔法のランプ」の
音楽劇を小学校の授業でやったことがあります。
その時知ってしまったんですけど、映画と元ネタってだいぶ違います。
子供ごころにも、「改変すげえ」とびっくりしたので
いまだによく覚えているんですが、元ネタだとお母さんがいたり、
魔神がもう一人いたり、お姫様がうっかりしています。
映画のヒロイン:ジャスミンは、気も強けりゃ頭も回る女で、
将来アラジンが尻に敷かれる未来がありありと思い浮かぶ感じの美少女なだけに、
なんか本当におとぎ話のお姫様って感じです。
しっかし、機転を利かせたとはいえ、
自ら進んで悪役とキスするとは恐れ入ります。
今期アニメのヒロインの話じゃありませんよ?
90年代初頭のディズニーヒロインなんですから、たまげたもんです。
個人的に、あのシーンで一気にジャスミンの株が上がったというか、
率直に言ってファンになりました。
かぁっこいい……。
そうそう、魔神がもう一人いるんですよ!
今回の引用文は、アラビアン・ナイトの全4巻シリーズの中の1冊からです。
改めて読み直したら、やっぱりいました。
その名も指輪の魔神。
ランプを得る冒険に際して、魔法使いがアラジンに渡したことからわかるように、
ランプの魔神よりも格下の魔神として描かれています。
よって、映画では省略されています。
ただ、今回選んだ本では、指輪の魔神のカラーリングが青黒い肌に銀色の目と
なっており、ランプの魔神は赤黒い肌に金色の目とされています。
原典がどうかはわかりませんが、映画の印象からランプの魔神は
青色のイメージが強いです。
まぁ、そんなこと言ったら、元ネタの魔神は人間を超越した魔物として存在しており、
映画に登場するランプの魔神:ジーニーのように陽気に歌い踊るわけでは
ないのできりがありませんね。
映画ではアラジンが3つ目の願い事に
「ジーニーに自由を与えること」を選んだため、
魔法のランプはただのランプに変わります。
アラジンの真心からの行動を見て、王様は法律を変えてでも
アラジンとジャスミンを結婚させることを決めます。
そして自由を得たジーニーはランプに囚われることなく、
自由に大空を飛び立っていきます。
書籍では物語の途中で先に結婚してしまいます。
結婚してもなお、ランプの魔神の存在が周囲にばれていないために、
さらなるトラブルと冒険に巻き込まれてしまいます。
最終的にはランプも指輪も失わず王位についています。
ところがアラジンは冒険が終わった後、魔神の力を借りることはありませんでした。
普通、何でもできる魔神がいたら、一生を通じて助けてもらおうと思うものです。
ましてやランプの魔神が叶える願い事は、映画では3つの制限がありましたが、
書籍では制限なしです。
何の対価もなく願いを叶える力を持つ存在を、どうしてアラジンが
必要としなくなったかについては、読者へ問いを投げかけるかたちで
答えをほのめかしています。
それはきっと、アラジンは魔神の力を借りてほしいもの――愛、富、権力――を
すべて手に入れたのでもう必要なくなった、ということでしょう。
そう考えると、この主人公:アラジンは、
割とどこにでもいそうな、普通の男の子なんですね。
そういう男の子だけが、魔法のランプが隠された地下へ入ることを許された
――なんとも夢のある話ではありませんか?