映画と本の感想ブログ「映画の本だな」

いつかディズニー映画を英語で観るために頑張るブログ。

映画「妹の恋人」

I know. Me, too.

映画「妹の恋人」


”ボクのこころは グチャグチャのまま

 でも ボクは おとうとが すき

書籍「みんなとおなじくできないよ」

湯浅正太 著

 

映画"Benny & Joon"

1993

ジェレマイア・チェチック 監督

 

 絵本「みんなとおなじくできないよ」は、

障害をもつ兄弟姉妹と暮らす子どもへ向けて描かれた作品です。

 障害や病気のある子の兄弟姉妹を「きょうだい児」と呼び、

日本では、18歳未満で兄弟姉妹の世話をしている場合、

「ヤングケアラー」とも呼びます。

ここ数年で支援や協力を必要とする存在として認知され始めてきたと思いますが、

まだまだ知名度は低い単語ではないでしょうか。

 適切なケアが求められる障害や病気の子どもではなく、

彼らの一番近くで過ごす家族――それも子どもにスポットを当て、

彼らの悩みや苦しみにも寄り添いたい、という思いが感じられる絵本でした。

支援の方法は色々ありますが、まずは正しい知識を得ることが大事だと思います。

きょうだい児のSOSを感知できる人が、これからもっと増えたらなら

きっとやさしい社会になるだろう、とあたたかい予感に胸をふくらませています。

 

 さて、映画の邦題は「妹の恋人」となっていますが、

原題は兄妹の名前を&(アンド)で結んでいます。

両親を亡くし、家族2人きりで生活する兄:ベニーと妹:ジューンの元へ

ジョニー・デップ演じる男:サムが現れて、

やがてジューンとサムは恋に落ちる――といったストーリーです。

 解説サイトによって「神経を病んだ」「自閉症気味」と表現が変わりますが、

ジューンは投薬・通院をしており、1人で外出することを控えています。

家の中にいても物に火をつける癖があるため、

ベニーは家政婦を雇ってジューンを1人にしないようにしています。

彼女は見た目には病気とわかり辛いのですが、

見知らぬ環境やストレスに対する反応の、発作的な激しさなどを見る限りでは、

彼女も自分自身をコントロールできない苦しみを抱えてるのは明らかです。

 そんな彼女と暮らすベニーは、両親が亡くなったおそらくハイティーン頃から

ずっと彼女を支え、時には自身の人生を諦めてきたヤングケアラーです。

異性との出会いがあっても妹の存在を思い出し、誘いを断ってしまいます。

家庭の複雑な事情を伝えられず、相手を勘違いさせてしまうことすらあります。

医師からはジューンを施設へ預けることを勧められていますが、

たった1人の家族と離れることに思い悩み、なかなか決心がつきませんでした。

 

 そこへ登場するのが、奇天烈で風変わりなサムでした。

 ジョニー・デップが演じる青年が、「ただの青年」なわけがありません。

パントマイムが天才的にうまい、しかし文盲で仕事を得るにも一苦労な彼は、

茶目っ気たっぷりの眼差しで、言葉よりも仕草でジョニーと観客の

心をわしづかみにします。

 親戚から厄介者としてベニーの家へ押しつけられたサムですが、

意外や意外、上手に家事をこなして台所をきれいにしています。

このシーンだけ見ても彼は周囲が言うほどバカじゃないとわかりますが、

問題はやり方が少々……いえ、かなり奇抜なこと。

ソファに乗ったまま天井のほこりを払うのはいいとして、

トーストを焼くのに使っているのが、アイロンとアイロン台です。

 「えっ?どういうこと?」と思われるかもしれませんが、

書いたまんまです。

アイロン台にパンをのせてアイロンでプレスします。

なぜ、トーストをつくるだけでこんなに面白いのか。

そしてアイロンがけが様になっているジョニー・デップを見ると、

やはりこの俳優はただ者ではないな、と感じます。

 

 紆余曲折の末、兄妹は別々に暮らすことを選択します。

妹は恋人と一緒にアパートで暮らし始めます。

兄は同じアパートに住む女性とお付き合いをしています。

笑顔あふれる2組のカップルの明るい未来を予感させて、幕が下ります。

 それぞれの選択、それぞれの人生、それぞれの旅立ち。

どんなに前向きで、どれほど良いことであっても、

変化は人の心に波風をたてていきます。

これは、ある家族が分かれて、新しいかたちで繋がり合うまでの物語です。

なんてことない変化が怖くなった夜に、にっこり笑える映画としておすすめです。

 

【映画のキーワード】

#ファミリー #コメディ #ピーナッツ・バター