映画と本の感想ブログ「映画の本だな」

いつかディズニー映画を英語で観るために頑張るブログ。

映画「ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密」

MY HOUSE, MY RULES, MY COFFEE!!

映画「ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密」

 

”クリスティーのミステリにおける「欺し」は、

 小説というプラットフォームに組み込まれた一個の塊なのではなく、

 欺しの企みの細い糸によって織り上げた布のようなもの、

 プラットフォーム自体が欺しでできているのだ。

書籍「アガサ・クリスティー完全攻略〔決定版〕」

霜月蒼 著

 

映画"Knives Out"

2019

ライアン・ジョンソン 監督

 

 まずお断りしておきたいのは、

引用文は今回ご紹介する映画とは関連がございません。

ではなぜ引用させていただいたかと言いますと、ライアン監督が

アガサ・クリスティー推理小説を意識して本作品の制作に臨んだ、という話を

ネットで見かけたためです。

 Wikipediaでも記事にされていますが、映画未視聴の方はちょっとお待ちを!

あらすじだけでなく結末まで書かれていますので、

「ミステリ作品紹介記事でネタバレは切腹もの」な方は、

まず映画を観てから記事をお読みください。

※2021年12月11日時点での確認です。

 ちなみに本記事は、後半でがっつりネタバレしていますので、

「~切腹もの」な方はやっぱりご遠慮くださいませ。

 

 さて、ミステリーの女王:アガサ・クリスティーの作品の

評論集である本著では、100作品分の評論が並んでいます。

知ってる作品に知らない作品……書いたクリスティーはもちろんのこと、

読む人の労力も結構なものです。

 引用文の通り、クリスティー作品の面白さを表現するには、

トリックの断片ではなく背景・人間関係・舞台までをも含めて

ストーリーを語らねばならない、とされています。

トリックの非凡さではなく、物語性がクリスティー作品の魅力ならば、

それを意識した映画の方はどうだったのでしょうか。

 

 物語の舞台は、周囲を鬱蒼とした木々で囲まれた大邸宅。

町の喧噪から離れた立地と装飾過剰な内観は、

館の主の世離れした感性を表わしているようです。

 それもそのはず。

館の主は商業的成功を収めたミステリ作家で御年85歳。

まだまだ現役で、年2冊のペースを維持して新作を生み出すタフさ。

ペン1本でのし上がってきたアメリカン・ドリームの体現者と言えます。

 癖の強い好々爺である彼を、コザクラは割と最後の方まで

犯人ではないかと疑っていました。

 ネタバレになりますが、被害者は館の主です。

犯人は別にいて、映画の半分手前でバレます。

どんでん返しが最後に待っていて、実は勘違いから被害者は自殺していた、

さらに犯人の他に被害者殺害を目論む者がいた、という2つの事実が

本作の謎を生んでいたとわかる構造になっています。

 どんでん返しまでにコザクラが推理していた内容では、

館の主は死んだと見せかけていたが、別の者が殺害した、というものでした。

ボードゲームが趣味で、推理小説を書いて生計が立てられるほど

頭のいい人がフィクションに登場するなら、

探偵か犯人かのどっちかだと思うのですが、それはちょっと安直だった模様。

今までミステリを読んだり観たりする中で、推理が当たったことがないのですが、

今回もめでたく外れました。

チクショウ。

 ところでこのボードゲーム、チェスでもオセロでもなく、囲碁なんですよ。

囲碁と言われて思い浮かぶのが「ヒカルの碁」くらいなんですが、

中国発祥の陣取りゲームが、アメリカでそれほど市民権を得ているとは知らず、

驚きました。

そんなにポピュラーなのか、ただの監督の趣味なのかは不明ですが、

ミステリの舞台設定としての館の不気味さに「マイナーなボードゲーム」として

一役買っている可能性もありますね。

そういえばコザクラは、ボードゲームでも勝った記憶が、てんでありません。

チクショウ。

 犯人は思惑が外れましたが、

探偵の役柄も、視聴前の想像からは裏切られるかたちとなりました。

ダニエル・クレイグ演じる探偵:ブランについては、

切れ者っぽいハードボイルド路線を予期していましたが、

蓋をあけてみると「普通のおじさん」っぽいところが多くて拍子抜けしました。

いや、「変なおじさん」もちょっと混じっているから、

名探偵ポアロの信用ならない胡散臭い感じに近いかもしれません。

 その点では確かに本作は、クリスティーを感じさせていたとも言えるでしょう。

 

 良質なミステリはステイ・ホームの最良のお友だちです。

映画も小説もたくさんあるのですから、心のおもむくままに、

まずは1作選んでみてはいかがでしょうか。

 

【映画のキーワード】

#殺人 #ナイフ #続編待ってます