映画「バベットの晩餐会」
映画"Babettes gæstebud"
1987年
ガブリエル・アクセル 監督
フランス料理はお好きですか?
慣れないテーブルマナー、なじみのない食材、ワインリストの長さ、
それから二度見してしまうようなお値段の高さ。
今回取り上げる映画「バベットの晩餐会」では、
フランスからデンマークへ亡命した名コック:バベットが
最高級のフルコースを用意する様が描かれています。
フランス料理に縁の無い、
デンマークの田舎で敬虔な生活を営んできた老人たちが、
彼女のつくる料理に驚きながらも夢中になっていきます。
……それはいいのですが、彼らがウミガメやウズラ(しかも生きたまま)を
食材として運んできたバベットを魔女扱いしているのは笑いどころです。
挙げ句の果てには、「どんな料理がでても黙って食べるぞ。
しかし味の感想や料理の話はしないこと」と団結して
未知の料理が並ぶ晩餐会を皆で乗り越える決意を固めます。
おおげさな、とは思うものの、食べたことがない食材――今まで食べ物だと
認識してこなかった食材を目にしたら、確かに「うっ」となりますよね。
蜂の子やイナゴなんかも、食べたことがなければ鬼門でしょう。
植物性ならまだ挑戦の余地がありますが、動物性の不慣れな食材になると
考えただけでもぞっとする食べ物が、国内外問わず結構あると思います。
実際、バベットの料理がおいしそうかと言われると……あの……その、
メイン・ディッシュの盛り付けを見て躊躇してしまったコザクラです。
後はお察しください。
あの見た目じゃなければ食べたいと思ったでしょうが、
その辺の美的感覚はお国柄と時代のせいか、ちょっと合わなかったようです。
ところが、作中で登場するデンマーク料理と思しきスープ(仮)は、
さらに上を行く「見た目がやばい。視覚が拒否するお料理」となっております。
おそらく干した魚、固くなったパン、ビールなどを材料にしてつくった
煮込み料理(?)だと思うのですが、色と質感が完全に「泥」です。
子どもの頃こねて遊んだ、泥、です。
追い打ちをかけるように、それを出されたおじいさんの顔が
いかにも「まずいものだされた」って感じでシュールなんですよね。
なんだかんだ言って、一番印象に残った料理かもしれません。
デンマークの泥っぽいスープ。