映画と本の感想ブログ「映画の本だな」

いつかディズニー映画を英語で観るために頑張るブログ。

映画「オズの魔法使い」

I'm a very good man. I'm just a very bad wizard.

映画「オズの魔法使い

 

”不可能だとわかっていることを実現するには、

 人はペテン師になるよりほかあるまい。

 かかしとライオンときこりを満足させるのはたやすかった。

 やつらはわたしがなんでもできるものと思いこんでいるからな。

書籍「すばらしいオズの魔法使い

ライマン・フランク・ボーム 著

杉田七重 訳

 

映画"The Wizard of Oz"

1939年

ヴィクター・フレミング 監督

 

 題名について一言申し上げます。

Wikipedia先生によると映画の邦題は「オズの魔法使」となっており、送り仮名が

つかないそうですが、この記事では「オズの魔法使い」とさせていただきます。

あしからず。

 

 さて、舞台となるはアメリカがカンザス

大平原が広がる農業地帯で、地平線の先までなだらかな田園風景が続いています。

日照に恵まれた土地ですが、激しい雷雨と竜巻に見舞われやすい土地柄で、

物語の「起」で少女:ドロシーは、竜巻によって家ごと宙に巻き上げられるという

災難によって、別世界へと運ばれてしまいます。

 

 子どもみたいに小さな種族や魔女、おしゃべりするかかしやライオン、

体をブリキで作り替えた男、翼の生えたサル――風変わりな住人たちの住む

この世界は、オズと呼ばれる偉大な魔法使いが治めるオズの国でした。

でも、誰もオズの姿を見たことがありません。

 家に帰る術をオズに求めて旅立つドロシーは、道中でそれぞれの悩みを

オズの魔法で解決してもらおうとする仲間を増やしていきます。

――「考える脳」が欲しいかかし

――「感じる心」欲しいブリキのきこり

――「勇気」がほしい弱虫のライオン

 旅の仲間で協力し合い、ようやっとたどり着いたのはエメラルドの都。

オズの住む都で、国の中央に位置する、何もかもが緑色の美しい都です。

きっと願いを叶えてくれるだろう、と期待してオズに面会した彼らは、

最終的にオズが偉大な魔法使いではなくペテン師だと見破り、

自分たちの願いを叶える魔法がないことを知ってしまいます。

 

 ……ところが、です。

自らを「ペテン師」と称するオズは、

かかし・きこり・ライオンの望みを叶えてしまいます。

魔法抜きで、です。

 驚くことにかかしたちは、オズがペテン師だとわかっているのに、

オズの芝居で本当にほしいものが手に入ったと喜んでいるのです。

――ぬかと針でできた脳みそはかかしへ

――絹とおがくずでできた心はきこりへ

――勇気の元になる薬もしくは酒はライオンへ

映画ではオズが渡す物が変更されており、脳みそは免状に、心はハート形の時計に、

薬はメダルに置き換えられていますが、偽物であることに変わりありません。

不審な顔をしながらも、オズの止まらない話しっぷりに気圧されるように

差し出された物を受け取り、「願いが叶った!」と喜んでいる皆を見るのは

ちょっと複雑な気持ちです。

 冒頭の引用文を読むだけでは、どう見てもオズが悪役です。

ところが本作の悪役は、東の悪い魔女と西の悪い魔女の2名であって、

オズは「嘘つきのニセ魔法使いだが根が悪いおっさんではない」とされており

後々にドロシーはオズのことを(心の中で)許しています。

コザクラは子ども心に「いいのかそれで」と衝撃を受けました。

 けれども大人になって読み返すと、そもそもかかしたち3名が欲しがっている

ものは、魔法で手に入れた時に価値があるのかってところが気になりました。

魔法で知性・情緒・勇気が突然手に入ったとして、

経験を経ないで手に入ったそれらを使いこなせるのか、

使いこなせる器を手に入れた人は持っているのか、という問題があるんですよね。

子どもの時は手段に注目してしまっていたけれど、

もらったから使いこなせるものばかりではない、

と大人になった今は考えるようになりました。

要は受け取る側にも資格があるよな、と。

 かかしたちは明らかにそれを欲していて、

誰が何と言おうとそれ以外のことなど眼中にありませんでした。

たとえハリボテだろうとペテンだろうと、「あげる」と言われて

すかさず「ください!ありがとう!!大事にします!!!」と言える人は

受け取ったものをちゃんと使いこなしていけるだろうな、と感じます。

 

 欲しいものが望みのままに手に入るわけなんてない、という現実と

欲しいものを今与えられたなら、それを喜んで受け入れられるか?という課題。

この問題があるから、大人になった今でも忘れられない作品なんだと思います。

 

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