映画「9人の翻訳家 囚われたベストセラー」
映画"Les traducteurs"
2019年
レジス・ロワンサル 監督
人気ベストセラー作家の続編発売にあたって、9人の翻訳家たちが集められます。
彼らは連れて行かれた先は豪邸……の地下にあるシェルター。
情報流出を防ぐために外部との接触を断ち、翻訳活動に専念する彼らでしたが
ある日ネット上に発売前の書籍の文書が流出してしまい……!?
シチュエーションだけならまさにミステリにぴったり。
何が驚くってこの映画のシチュエーション、本当にあったのだからびっくりです。
代表作「ダ・ヴィンチ・コード」を執筆したダン・ブラウンの人気シリーズ新作の
出版前に、数カ国語の翻訳者を地下で翻訳させていたらしいのです。
ネットに接続しない生活が考えられない今となっては、
もの凄く息苦しく感じられる就労環境だと思いますが、
実際の翻訳活動ではどこまで制限がかかっていたのか気になります。
あくまで連絡手段が断たれただけで、情報収集や参考資料の検索などには
ネットが使用できたのでしょうか。
それとも連絡内容に検閲がかかっていたのか。
いずれにせよ、コロナウイルスで自宅待機が要請される世の中においては
1つの場所に閉じ込められて生活する、というのは良い響きではありません。
太陽光に一定期間あたらないと体調に影響がでるコザクラにとっては、
出来れば一生関わりたくない、いや~な仕事です。
ミステリ自体については疑問が残る点が多いのですが、深く考え込まずに
さらーっと流して観た方が良さそうです。
特殊な就労環境に目が奪われがちですが、ラストまで見終わると
「別にこれ、犯行目的と関係ないじゃん」と思うポイントが多いのです。
ミスリードなのか何なのか。
犯人が就労環境を「創作活動への不敬」と非難していましたが、
実はそれも本題ではなかったという肩すかし感。
真実を見つける近道など存在しない、無駄に思える寄り道が現実には多いものさ
――ということを教えてくれる映画だったと思いました。