映画「譜めくりの女」
映画"La Tourneuse de pages"
2006年
ドゥニ・デルクール 監督
譜めくり――ピアニストの後ろに控え、楽譜をめくる行為、またその係のこと。
そう言われれば、そんな人がいたような気がします。
舞台の上での主役はピアニストですから、譜めくりはいわば黒子。
視界に入っても、その場にいない者として扱いますから、
誰がその場にいたのかは記憶に残りません。
ピアニストではなく譜めくりを主役にもってきた映画がこちら、
今回ご紹介する「譜めくりの女」です。
ジャンル分けするならミステリ/ドラマとなり、淡々とした主人公の復讐劇です。
全編を通じて主人公が何をしでかすか分からずハラハラさせられ、
最初から最後まで誰かが不幸になりそうな空気でいっぱいで、
アクション映画でもないのにやたらと心拍数が上がる映画でした。
ピアニスト:アリアーヌの思慮に欠ける行動に傷つき、ピアニストの道を
諦めた主人公:メラニーは、音楽とは無縁の学業を選び、その縁で子守として
アリアーヌの家にやってきます。
過去の事故が原因で精神的に不安定なアリアーヌの心を、譜めくりの役を
担うことで落ち着かせ、信頼を得たメラニー。
ピアニストとして舞台に立つアリアーヌの手は震えますが、メラニーの助けが
あり、演奏は大成功に終わります。
しかしメラニーは過去の恨みを忘れてはおらず、信頼を逆手にとって
アリアーヌを徹底的に打ちのめすのでした…。
地下にプール、音楽室にグランドピアノ、庭にテニスコートという邸宅を
舞台に、物静かなメラニーが積み木を積み上げるように着実にアリアーヌを
手中に収め、そして最後には全てを破壊して家を出て行きます。
正直、スカッとするような復讐劇ではなく、第一にメラニーはアリアーヌに
恨み言をこぼさないので、何を考えての行動なのかはっきりしません。
おそらくアリアーヌもメラニーと過去に会っていることを覚えていないでしょうから、
彼女からするとなぜメラニーが自分を恨んでいるのか知り得ないでしょう。
ピアノの音色をBGMに、犯人の告白もなく復讐は終わる――ドキドキさせられました。