映画と本の感想ブログ「映画の本だな」

いつかディズニー映画を英語で観るために頑張るブログ。

映画「イン・ハー・シューズ」

Clothes never look any good. Food just makes me fatter. Shoes always fit.

映画「イン・ハー・シューズ

 

”彼女の足もとだけはいつも正しく見えた。

 ローズは人気者がもっているものを手に入れられたのだ。

 たとえ足首から上がまったくいけてなくても気にならなかった。”

書籍「イン・ハー・シューズ

ジェニファー・ウェイナー 著

イシイシノブ 訳

 

映画"In Her Shoes"

2005

カーティス・ハンソン 監督

 

 映画を観てから原作本を読みましたが、最初の感想は「そっちの意味だったの?」

というものでした。

原作本のカバーにジーニアス英和辞典第3版からの引用があり、"In her shoes"は

「彼女の立場に身をおいて」と訳すことが、最初から示されています。

しかし映画ではその意味がいまいち伝わらず、女性と靴をめぐるエピソードの

多さからつけられた題名だろう、と気にも留めませんでした。

――彼女の立場に身をおいて考えてみる

 ここでいう彼女は、3人の女性たちのことをそれぞれ指していると思われます。

自分の物を何でも――靴から始まり、果ては恋人まで――奪ってしまう美人だが

学習障害のある妹:マギーと、高給弁護士として成功するもファッションは

ダサくてイケてない姉:ローズ。

2人の視点に交わるのは、精神的に不安定で治療していた娘を失い、

後悔している祖母:エラ。

 それぞれ人に言えない悩みを持った3人の女性たちが離ればなれになりながらも

お互いに近づき、絶たれた絆を取り戻すまでのお話です。

 

 実際のところ、原作でも映画でも慣用句としてではなく、

実物の靴がキーアイテムであり、主人公である2人の姉妹と

その祖母の人生観と絆を象徴しています。

 ローズのクローゼットに並べられた靴の山を前にして、マギーはニヤリと笑って

物色し始めます。

数十足の靴は色ごとに整列していて、真面目なローズの性格がうかがえます。

 

  買うばかりで履くことを楽しめないローズをたしなめるマギーには、

コレクションを並べられるクローゼット付きの部屋もなければ、仕事もありません。

一方、オシャレが苦手なローズは自分に似合う服がわからず、自分の体型にも

コンプレックスを抱き、ダイエットをしては失敗を重ねてきました。

唯一靴だけは最高の物を見つける術を持っていますが、

それらを履いて外へ飛び出すことができずにいます。

そして長年の娘婿との確執から孫娘たちとの連絡が途絶えていたエラは、

ローズの結婚という旅立ちの日にかつて自身が履いた靴を贈ります。

 欧米の結婚式では花嫁の幸せを祈って、花嫁が5つのアイテム――新しいもの・

古いもの・借りたもの・青いもの・6ペンス銀貨――を身につける風習があります。

ウエディングドレスはマギーがプレゼントします。

靴は古くて、借り物で、青い花柄がインソールに描かれています。

きっとローズはそれに加えて6ペンス銀貨を身につけているはずです。

こうして、花嫁の幸せを真に願う2人の女性からの贈り物でローズは

幸せな花嫁となり、物語は幕を閉じます。

 

――彼女の立場に身をおいて考えてみる

 他人の気持ちになって考えてみるって難しいですよね。

自分の問題が大きく感じられる時はなおさら、

他人のことなんか考えている暇なんかない!と思ってしまいます。

 ローズの欲しいものをマギーが持っているように、マギーもローズを羨んでおり、

この辺りの描写は映画では削られた大学でのシーンの方が、

丁寧でわかりやすかったと思います。

ロマンスに無縁の日々をローズが勉学に費やしていた頃、マギーは特別教室で

他人と同じ勉強をできない自分に嫌気がさしていました。

 人間はどうしたって自分のことがかわいい。

他人のことは所詮他人事です。

それでも相手のことが大切なら、

時には距離も時間もとって自分の問題を見つめ直し、

その上で相手の立場を慮ってみる必要があるのでしょう。

 

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