映画と本の感想ブログ「映画の本だな」

いつかディズニー映画を英語で観るために頑張るブログ。

ディズニー・アニメ映画「美女と野獣」

If he could learn to love another and earn her love in return by the time the last petal fell then the spell would be broken.

ディズニー・アニメ映画「美女と野獣

 

映画 " Beauty and the Beast "

1991年

ゲーリー・トゥルースデイル/カーク・ワイズ 監督

 

 自分が恋に落ちた時、その理由を考えることがありますか。

 あれこれ思いついてはみるものの、どれも決定打に欠けるし、

そもそも言い表せるような気がしないから、黙っていたくなります。

だって結局のところ「好みの容姿」や「仕事ができる」とか「優しい」と

言ってしまえば、話をしている相手には伝わるだろうけど、恋に落ちた瞬間に

そんな計算しているわけではないから正しくないと感じてしまうでしょう。

 

「あの人のどこが好きなの?」

「そりゃもう全部」

 

 そう答えられたら楽だけど、心の中では「んなわけないじゃん」とも思います。

思うんだけど、言いたくない。

言ったら全部嘘になりそう。

 草津の湯でも治せないと評判なのに、理性的に自分の恋心を分析できる人は

果たしてこの世にいるのでしょうか。

 

 実写版ディズニー映画「美女と野獣」についてブログ記事を書いた時に、

著者を「ボーモン夫人」としていました。

それは誤りではないのですが、実際にはボーモン夫人は子ども向けに

書き直した人で、その元になったオリジナル版の著者は

ヴィルヌーヴ夫人」という別のフランス人女性なのです。

 ちょっとややこしくしてしまったかもしれませんが、

世間一般に「美女と野獣」として知られているバージョンは

ヴィルヌーヴ夫人版ではなく、ボーモン夫人版の話です。

 

 では、具体的にどの辺りを書き直したのか?

 オリジナル版を一目見ると理由がわかります。

ぶ厚い。

ページ数が多いんです。

 ボーモン夫人版が絵本で出回る薄さであることに比べると、

ヴィルヌーヴ夫人版は野獣が王子に戻るまでで、約半分を消費しています。

残りの半分で今までの経緯を懇切丁寧に説明してくださるのですが、これが長い。

複雑なのです。

登場人物も多く、特に妖精が1人で収まりきらないため、その辺りの裏事情を

延々と説明すると倍のページ数になってしまうのです。

 

 しかも、勝利条件――野獣が王子様に戻る条件に細かい規定がついています。

 

”私はおまえに命じよう。

 醜いのと同じくらい愚鈍なふりをするように。

 そして、もとの姿を取り戻したければ、若く美しい娘がおまえに喰われると

 知りつつ自分から会いにくるのを待つように。

 さらに(途中省略)娘は、命の危機はないと悟ったあと、

 おまえに求婚するほど深い愛情を抱かねばならない。

 世にも稀なそんな女性に出会うまで、おまえは自分自身にとっても、

 おまえを見る誰にとっても憎悪の的となるように・・・・・・””

書籍「美女と野獣〔オリジナル版〕」

ガブリエル=シュザンヌ・ド・ヴィルヌーヴ 著

藤原 真実 訳

 

 …これでも端折っているし、条件はさらに続きます。

 要するに、王子であることが相手の女性にばれるように直接・間接的に

行動したらアウト、ということです。

おしゃべりで頭の良さや気遣いをアピールするのも、ダメ。

自分の容姿や能力、家柄、性質をひけらかすことなく、

ひたすらに自分の善意だけで乙女の愛を勝ち取り、

結婚して一夜を過ごさないと(健全でOK)王子には戻れません。

 どこのプロポーズ大作戦か知りませんが、これは無理ゲー。

心が折れちゃうわ。

 現に王子は、全て片付いてベルに説明する段階で

「実際に僕は何度も心が折れました」と告白している始末です。

 

 さて、善意。

 これは恋心の理由となりうるのか。

 ぱっと見、微妙な感じがします。

見かけの美しさでもなく、気が合うかでもなく、

ただいい人だから、恋に落ちるのかどうか。

 ベルは結局、野獣の善意に感謝して結婚を承諾しますが、

何度も・・・それはもう何度も葛藤していますし、

同じ床につく夜になってもまだ悩んでいます。

野獣を男性として魅力的だと思わないまま結婚し、

夜が明けて自分が望む通りの王子が横にいることを見つけ、喜びます。

 冷静に考えて、善意が恋心の直接の理由にはならない、と私は思います。

 でも、善意がなければ人の縁は繋がれない、特別な間柄にはなれない、

という意味でもあるのかな、とも思うようになりました。

 人は変わりますから。

 それはもう、野獣から王子様になるくらいには、変わることがあるのでしょう。

 

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