ディズニー・アニメ映画「ライオン・キング」
”子役の二人が「早く王様になりたい」の歌を舞台前で歌っている間、
黒い下げ幕の前では、舞台係が音楽に合わせて、
象の墓場の巨大な骨を組み立てる。
(中略)
観客席側から見れば、舞台では申し分のない空想の世界が繰り広げられている。
だが、舞台裏ではその空想を空想たらしめる現実があり、その現実は生々しく、
次の瞬間何が起こるかわからないという、本質的にライブの舞台なのである。”
書籍「ライオンキング ブロードウェイへの道」
藤田みどり 訳
映画"The Lion King"
1994年
ロジャー・アレーズ/ロブ・ミンコフ 監督
映画公開から3年後の1997年7月に、アメリカで初演された、
ミュージカル「ライオン・キング」は、大成功を収めました。
このミュージカルは、ブロードウェイ史上、5番目のロングラン公演を果たし、
演劇史に名を残し、現在でも新たな世代にファンを増やしています。
日本では、1998年から東京の劇団四季が上演しています。
地方公演も多いので、地元のホールで観劇された方も多いのでは?
コザクラも以前、鑑賞したことがあり、
映画との違いを比較しながらも、
映画とはまた違ったワクワクを楽しむことができました。
特に、ヌーの暴走の表現方法には、舞台ならではだ、と驚きました。
今回引用した書籍は、ミュージカル版「ライオン・キング」の
演出・デザインに携わったジュリー・テイモアが、
公演初夜に向けて、舞台を制作してきた流れについてまとめた本です。
原作(今回は映画)があるとはいえ、スクリーンと舞台は全くの別物。
すでに映像で表されたものを、単純に役者や背景で置き換えればいい、という
ものではありません。
映画を読み解きながら、ストーリーを構造として捉え、
物語を組み立て直し、キャラクターの性格を掘り下げ、
それを衣装や演技に反映させる作業が、必要でした。
「お芝居にする」「舞台化する」ことに焦点を当てた本なので、
「ライオン・キング」に関わらず、この手のことに興味がある人は、
ぜひ一度お手にとっていただきたいです。
下世話な話をしますと、上記のミュージカルの成功も含め、
ディズニー作品の中では「かなり儲かった作品」だと推測されます。
いわゆるデイズニー・ルネサンス(※下記参照)の1作であり、
興行収入はさることながら、ビデオ販売・サントラ販売などでは
販売数世界一位を記録しています。
※ 1990年代のデイズニー作品が、軒並み高評価・好成績だったことからの呼称。
興行収入ランキングは、集計者によって基準が異なり、
サイトによって結果がまちまちなのですが、
ピクサーも含めたディズニー作品の中では、おおよそ3~10位というところ。
ちなみに3位だった場合、2位は「アナと雪の女王」で、
1位は「アナと雪の女王2」!
強いな! アナ雪!!
さて、挿入歌の「サークル・オブ・ライフ」は、
運動会や発表会の演目でもお馴染みの曲です。
映画のテーマを伝える、メッセージ性の非常に強い曲です。
映画ではオスだったラフィキじいさんが、
舞台だとメスに変更されているのは、この歌を歌っているのが、
ラフィキである、という設定がなされたため。
映画だと、女性の歌声をバックに、サバンナの雄大な景色が流れるのですが、
これが舞台上だと「誰が歌っているの?」という疑問が生じるため、
上記のような意味づけがなされ、ラフィキに白羽の矢が立ったわけです。
ところで、冒頭の何言っているのかよくわからない部分は、
英語ではなくズールー語で、南アフリカ共和国の公用語の一つです。
空耳でネタにされる冒頭の部分は、
「父なるライオンがやってきた」という意味だそうです。
子どもの頃からの不思議が、ひとつ、解消されました。
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