映画「ジュリー&ジュリア」
”「私が死んでもレシピは残る」と言ったのは小林カツ代だが、
料理書は、そのような意味で、自分とはちがうべつの誰かの感性が
きわめて具体的に綴られた痕跡であり、読者と出会って目覚めるときを、
それらは待っている。”
書籍「食べたくなる本」
三浦哲哉 著
映画"Julie & Julia"
2009年
ノーラ・エフロン 監督
料理本を読むのが、趣味です。
こう言うと、「料理好き」と勘違いされることも多いのですが、
「趣味は読書で、対象ジャンルが『料理』『家事』『実用』」という意味です。
個人的には、料理はしなくて済むならしないに越したことはない、という考えです。
実際の調理では、手間暇は、省けるだけ省きたいタイプ。
でも、読み物としての「料理本」は、
実用書の中でも格別の面白さがあると思い、目を通す機会が多いです。
今回の引用書籍は、映画批評を生業とする著者が、
テーマごとに料理の「本」を取り上げて連載していた記事を、収録した本です。
著者の三浦さんは自身も台所に立って包丁を握りますが、
その目線はあくまで素人。
家の付き合いや財布の力で、料理界の裏の世界やアッパーな非日常を覗く……と
いったこともなく、その語り口はどこまでも一般庶民に寄り添っており、
その感性にはつい、うんうん、と頷いてしまいます。
料理ではなく料理本をテーマにした本というのも、珍しいものです。
さて、今回取り上げる映画は、料理で人生を変えた、実在の女性2人の人生を
交錯させながら描いた「ジュリー&ジュリア」です。
アメリカの家庭に本格フランス料理を伝えた料理人:ジュリア・チャイルドには、
メリル・ストリープを迎え、
ジュリアのレシピ524点を1年で制覇したブロガー:ジュリー・パウエルには、
エイミー・アダムスを当てています。
この映画でジュリアのことを知ったのですが、映画にも登場する通り、
台所が国立アメリカ歴史博物館に寄贈され、現在も展示されております。
「キッチンが博物館にある」という文言だけ見ても、
彼女の偉大さがひしひしと感じられます。
1960年代にテレビ番組で主婦層の人気を得て、
共著も含めて約20冊の料理本を世に送り出しました。
史実では身長188cmと高身長だったジュリアを、
168cmのストリープが演じているため、多少違和感のあるシーンもあります。
――が、そんなこたぁ関係ねぇっ!!
ストリープ演じるジュリアの可愛さに、コザクラはびっくり仰天しました。
喋り方といい、仕草といい、笑顔といい、もう本当にかわいくて目が離せません。
この感情は、まさしく「萌え」です。(断言)
ストリープの大女優たる演技力に脱帽です。
まさか妙齢の女性に対して、これ程「かわいい」を連呼する日が来るとは……。
もう一人の主人公、ジュリーは、公務員としてフルタイムで働き、
鳴り止まない電話を片っ端から取って応対する日々を過ごす、30歳の女性。
何も成し遂げることなく生きてきた自分の人生に、名状し難い不満を抱いています。
ピザ屋の2階に借りた部屋のボロさに文句を言いつつ、夫と猫と暮らしていました。
そんな彼女の趣味&気分転換は、料理!
レシピ通りの手順で行動すれば、おいしい成果を得られます。
障害(映画内では「ADD:集中力散漫」と説明されています)ゆえに
他の家事はうまくこなせなくても、料理だけは彼女の十八番でした。
何もかも中途半端な自分に嫌気がさし、
ジュリーは思い切って「365日で524のレシピを再現する」という
かなり積極的な目標を掲げます。
フルタイムの仕事をこなしながらの無謀とも言える挑戦に、
ブログは人気を集め、新聞の記事にもなり、
ついにはブログを見た出版社から書籍化のオファーが!
しかし、喜ぶ彼女の元に、1本の電話がかかってきて――――
続きはぜひ、映画で確認してみてください。
コザクラもこうして自分のブログで、他者の制作した映画や書籍を
取り上げている身なので、ラスト直前のジュリーの絶望が、我が身に沁みました。
それでも、ジュリーがブログを書かなければ、
そしてブログが本にならなければ、さらに本が映画にならなければ
――コザクラはジュリアを知らないままだったでしょう。
ジュリアの勇気と愛に称賛を!
ジュリーの努力と忍耐に拍手を!
【映画のキーワード】
#伝記 #恋愛 #バター