映画と本の感想ブログ「映画の本だな」

いつかディズニー映画を英語で観るために頑張るブログ。

映画「センター・オブ・ジ・アース」

A world within the world.

映画「センター・オブ・ジ・アース」

 

”「そのとおりですね、叔父さん。

 学者たちが知恵を絞り、巧みに再現してみせた太古の植物が、

 神様の思し召しでこの巨大な温室に保存されたんです」

書籍「地底旅行

ジュール・ヴェルヌ 著

平岡敦 訳

 

映画"Journey to the Center of the Earth"

2008

エリック・ブレヴィグ 監督

 

 SFの父――ジュール・ヴェルヌ

彼の有名作品といえば、「十五少年漂流記」や「海底二万里」。

読んだことはなくても、題名やあらすじを知っている方は多いと思います。

 今回取り上げる作品「地底旅行」(原題の直訳は「地球の中心への旅」)も、

世に広く知られています。

1864年に発表されたこの作品は、古典的なSF冒険小説として根強い人気を誇り、

現代においても、子ども向けに書き直して出版されるなどして

長く愛されています。

 

 登場人物は、変人科学者のリーデンブロック教授と、甥のアクセルソン。

古書に書かれた暗号を読み解き、「地球の中心に至る道」を発見した教授は、

甥を助手に連れて、アイスランドの火山に向かいます。

最初、甥は嫌がっているのですが、教授に強く出られず、断れません。

現地で雇った案内人のハンスは、無口な男。

無愛想な男ですが、冒険が終わる頃には皆、ハンスが好きになっています。

 3人は暗号の示す通り、スネッフェルス山の火口を下って、数十日間歩み続けます。

閉塞した未知の環境下での、ストレスと困難が彼らを襲います。

時には仲間と離ればなれになることも。

それでも3人は懸命に進み、とうとう地下の大空洞に出ます。

 そこで彼らが目にしたのは、常識では考えられないような自然の不思議、

生命の神秘、進化の奇跡の数々。

しかし、驚く彼らの周囲は、これまでの知識では太刀打ちできない

危険で満ちあふれていました。

 第一、こんな地の底から、どうやって地上に戻ればいいのでしょうか?

 

 今回取り上げた映画は、厳密に作品を映像化したのではなく、

ジュール・ヴェルヌの作品が事実を書いていた、という体で

現代の若者が失踪した科学者を探して地底を探検する、という筋書きに

変更されています。

 失踪した科学者:マックスを探して、マックスの弟:トレバーと

マックスの息子:ショーン、アイスランドで雇った山岳ガイド:ハンナの3人は、

マックスの残した地震センサーを求めて、アイスランドの火山に向かいます。

悪天候に悩まされ、落雷と落石による事故から洞窟に閉じ込められてしまい、

3人は脱出のために廃坑のトロッコに乗り込み、洞窟の奥へと進むことに。

地底世界を冒険する内に、ジュール・ヴェルヌの「地底旅行」が

真実を書き記していたのだと、確信を持つようになります。

 

 ネタバレしますと、コザクラは、マックスが今も地底で生きている、と

映画の中盤までは信じていました。

失踪から10年も経っているので、普通に考えれば死んだと考えるべきでしょうが、

まさか死体を見つけさせて、はっきりと死んだことを描くとは思っていませんでした。

 マックスの死を描写するなら、遺書や遺品でも十分伝わったと思うのですが、

あえて死体を発見し、墓をあんなに大きく作らせたというのは、

監督の「曖昧な描写ではなく、明確で裏表のないシーンにしたい」という

意図を感じました。

 ……でもなァ~~!!

個人的にはその「わかりやすさ」がちょっと「過剰な説明」に感じちゃいました。

「そんなに言わなくても、わかってるよ!」みたいな。

「もっと観客の想像力を信じてくれよ」的な。

 

 とはいえ、原作そのままではなく、原作をガイドブックにした冒険旅行という

映画のアイディアは、とても良かったです。

原作既出の映像化の際は、原作との相違点が良くも悪くも目についてしまいますが、

こういう立ち位置に原作本を置くと、そういう点が気にならず

映画を楽しむことができるのだな、と新たな発見がありました。

 ましてや原作の初出は1860年代です。

古さが良い味になっている古典作品ほど、そのままよりも一工夫した方が

魅力的な派生作品になる可能性を秘めていると思います。

 

 童心に返って、冒険を楽しみたい時に、ぜひおすすめしたい作品です。

 

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#冒険 #ファンタジー #SF