映画と本の感想ブログ「映画の本だな」

いつかディズニー映画を英語で観るために頑張るブログ。

映画「シャイニング」

All work and no play makes Jack a dull boy.

映画「シャイニング」

 

”「行かないったら」ダニーはそう言うと、

 血にまみれた父の手をとって、くちづけした。

 「だいじょうぶ、もうそろそろおしまいだよ」”

書籍「シャイニング」

スティーヴン・キング 著

深町眞理子 訳

 

映画"The Shining"

1980

スタンリー・キューブリック 監督

 

 別の映画作品の話なんですけど、結婚をテーマにした映画で、

登場人物が過去の夫婦仲について

「シャイニングみたいだった」と答えるシーンがあります。

シャイニングみたい……夫婦関係を表わす言葉としては、なかなかのパワーワード

 幽霊屋敷の中で孤立無援となった母親が、幼い息子の手をひいて、

悪霊に取り憑かれた夫の狂気から逃げ惑うストーリーの「シャイニング」。

ここではおそらく映画版を指していると思われますが、

父親がおかしくなって家族の殺害を試み、母親が全力で逃げる、

というのは原作でも同じです。

追う方も追われる方も理性を保ってはいられません。

惨劇を避けるために死に物狂いで逃げ惑う母の狂乱状態を思うに、

「シャイニングみたい」だった夫婦生活の内面の大嵐が想像されます。

 

 原作と映画の相違については、ウィキペディアにも詳しいところです。

もちろんそれが映画の批評欄を賑やかしている点でもあり、

賛否両論あるのは当然のことと思われます。

コザクラからすると、ここまで違うと映画は派生作品としての面が強くなり、

別物だと思えるのであまり気になりません。

しかし原作読了済みで思い入れのある人なら、

解釈の異なる映画を、無理して観ることはないでしょう。

逆もまたしかりです。

 でも、そうでない大部分の人には、おそらく両方の作品を

それぞれ楽しめる余地があると思いますので、

ぜひ一見・一読することをおすすめします。

 個人的に、原作と違って良いと思えた変更点の一つが、巨大迷路です。

庭に配された迷路の生け垣は人の背丈よりも高く、

その敷地の広大さもあって、ちょっとしたアトラクションの様相です。

これが原作には存在せず、

代わりに動物の形を模した巨大な生け垣が点在していることになっています。

原作では、生け垣にホテルの悪霊が乗り移り、一家の救出のため、

麓から登ってきた料理人:ハロランを襲う――という流れになっています。

実際の映像を見てもらうと納得してもらえると思いますが、

生け垣の動物よりも、物言わず動かない巨大迷路の方が、

見る者の恐怖心を煽ります。

より怖い演出としては、映画の巨大迷路に軍配が上がると思っています。

 

 物語の主役ともいえるホテル、そしてその敷地内に存在する巨大迷路は、

実在しない映画のセットとして造られました。

もし実在のホテルないし宮殿をロケ地にしていたら、

今頃「幽霊映画のロケ地は本当に幽霊屋敷だった!?」みたいな企画で

年末のテレビ番組が組まれていそうなものです。

 外観や内観のモデルとなった建物はあるらしく、ティンバーライン・ロッジと

マジェスティックヨセミテ・ホテルの名があげられていました。

映画を観ると、舞台となったホテル:景観荘(オーバールックホテル)が

あまりに魅力的過ぎて、幽霊さえいなけりゃ――いやちょっとくらいなら

いてもいいけど――行ってみたい、という気持ちにさせられます。

一晩過ごすのはやっぱり嫌ですけどね。

 5ヶ月間という長さと、外界断絶に近い通信環境の悪ささえなければ、

ホテルの冬季管理人という仕事は、確かに魅力的です。

孤独にさいなまれ、自分を失う恐れがあったとしても、

何者にも邪魔されず、館の主になったかのように振る舞えるなんて、

それこそ金を払ってでも体験したい人がいても、不思議ではありません。

 改めて、舞台設定の妙にうならされました。

時を超えても熱狂的に支持される理由の中に、著者のこうした

細やかなピースの配置があるのだな、と痛感した1作です。

 映画はマジで怖いので、ホラー苦手な方はそこだけご注意くださいませ。

 

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