映画「穴/HOLES」
”スタンリーは、きらめく夜空を見上げながら、思った。
ここよりほかにいたいところなんてない。”
書籍「穴」
ルイス・サッカー 著
幸田敦子 訳
映画"Holes"
2003年
アンドリュー・デイヴィス 監督
本を読んで「これ、面白い!」と思った時、
心の中の本棚に、その本をしまうことにしています。
本棚はカテゴライズされていますが、ジャンルでまとめているわけではありません。
カテゴリーは「人生の折々に読み返したくなる本」「もう内容は空で覚えて
いるけど、青春の思い出の本」「あわよくば友人・知人に普及させたい本」――
――そして、「子どもに贈りたい本」
コザクラにもし子どもがいたとしたら、
子ども部屋の本棚に置いておきたい本が、いくつかあります。
これはその内の1冊です。
小・中学校の図書室で見かけたという方も多いのではないでしょうか?
ルイス・サッカーのベストセラー:「穴(あな)」
1998年に出版され、同年に全米図書賞を、
翌年にニューベリー賞(アメリカの児童文学賞)を受賞しました。
あらすじを説明するにあたって、ニュアンスの近い作品名をあげるとしたら
「ジョジョの奇妙な冒険」がそれにあたると思います。
いや、本当に。
これは、世代を超えた呪いのお話なんですよ。
主人公:スタンリー・イェルナッツ四世は、
ひいひいじいさんの呪いによって、無実の罪で更生施設へ送られます。
しかしそこは更生施設とは名ばかりで、施設一帯の地主であり、
その地に大昔の大泥棒のお宝が埋まっている、と信じている女所長が
権力を振りかざしていました。
送られてきた少年たちを労働力にして、そこら中を穴だらけにしてみるも
出てくるのは財宝ではなく、ガラガラヘビ、サソリ、そして黄斑トカゲ。
噛まれれば明日の命の保証がない黄斑トカゲにびくつきながら、
少年たちは乾いた大地に穴を掘り続けます。
太っちょで穴掘りが苦手なスタンリーは、いじめられ、自分の不運を呪います。
しかし更生施設にいた、小柄な少年:ゼロと出会うことで、
スタンリーは冒険に出ることになり、最後にはご褒美――お宝を手に入れます。
実はゼロは、スタンリーのひいひいじいさんに呪いをかけた老婆の子孫。
5代にわたる呪いの連鎖を、知らず知らずにスタンリーは打ち破ったのでした。
引用文は、冒険の果てに何とか一命を取り留めたものの、
行く先を決めあぐねているスタンリーの独白からです。
何か不運なことがある度に、「あんぽんたんのへっぽこりんの豚泥棒の
ひいひいじいさんのせいだぞう」と呟いていたスタンリーは、
ここではじめて自らの運命を祝福します。
(一族の呪いは、ひひじいさんが豚を盗んだことに端を発します)
無実なのに有罪とされたことも、更生施設でいじめられたことも、
穴を掘って手の皮がむけたことも、更生施設を脱走して荒野をさ迷ったことも、
死にかけたゼロを背負って山を登ったことも、すべて受け入れます。
自分の運命を肯定した時、スタンリーの心の中に幸せな気持ちが広がります。
そして、次の冒険に挑戦する勇気も湧き上がるのです。
映画は脚色を加えてあるとしても、基本的には原作に忠実に作られています。
まぁ、スタンリーは太っちょではなく、ひょろひょろの頼りなさそうな感じの
男の子がキャスティングされていますが、そこは目をつぶりましょう。
原作では穴を掘るという、一見すると無意味な肉体労働のおかげで
スタンリーは体力がつき、ゼロを背負って山登りができるほど
たくましく成長した、という仕組みなのですが、
映画の中でスタンリーを劇的に肉体改造するわけにはいきませんからね。
ともあれ、初見の方は原作本であれ映画であれ、
途中で「ん?これは何の話?どこに繋がっているの?」と思うシーンが
あるかと思います。
最後にはすべてのピースが気持ちよくはまり、
文句なしの大団円を迎えますので、ご心配なく!
見事な伏線回収のお手本としても、どうぞお楽しみくださいませ。
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