映画と本の感想ブログ「映画の本だな」

いつかディズニー映画を英語で観るために頑張るブログ。

映画「ライトハウス」

Why'd ya spill yer beans.

映画「ライトハウス

 

書籍「世界の民話館 人魚の本」

ルース・マニング=サンダーズ 著

西本鶏介 訳

 

映画"The Lighthouse"

2019年

ロバート・エガース 監督

 

 警告!

 予備知識無しにこの映画を観ることは、おすすめしません!

(タネ明かし無しで謎だけ提供されるので、頭がこんがらがります)

 

 警告その2!

 エロ・グロあります! 無理な方は視聴をお控えくださいませ!

(コザクラ的にはアウト寄りでした。観ていて気持ち悪かった……)

 

 ネタバレ厳禁な方も、この映画だけはネタバレしてもらってから

観に行った方がいいと思います。

それなりに知識を詰め込んでいかないと、意味不明なまま時間が過ぎて

ラストも「は??」となってエンディングを迎えてしまい、

釈然としない思いを抱えて席を立つことになります。

というか、なりました。 コザクラは。

 あまりにちんぷんかんぷんだったので、

見終わってすぐに考察サイトを探したら、

公式が「徹底解析ページ」を作っていました!

これを読んでから映画を観ればよかったな、とちょっと後悔。

このページは、ストーリーのネタバレが目的ではなく、

シーンを読み解く手助けとなる情報が集められています。

 映画を視聴予定の方は、ぜひ下記リンクから情報を仕入れていってください。

 すでに視聴済みだが、訳わかんなかったよ、という方もこちらからどうぞ。

 

徹底解析ページ | 映画『ライトハウス』公式サイト

 

 さて、謎が謎呼ぶというか、謎しかない本作ですが、

その中でも人魚の謎は、比較的わかりやすい部類かと思います。

上述の「徹底解析ページ」でも語られているように、

人魚は性的衝動のメタファーとして用いられています。

新人の灯台守:イーフレイム・ウィンズローが人魚と交わる夢想をしたり、

人魚の像を片手に自慰したりするシーンからも、

人魚が欲望のはけ口として機能していることがわかります。

 物語の舞台となる島には、灯台と関連施設の他は何もありません。

何の娯楽もない孤島で、

先輩の灯台守:トーマス・ウェイクにしごかれて、働くだけの日々。

2人の男にとって、4週間は長く、精神は徐々に鬱屈していきます。

人魚に夢を見て、肉体を慰めるイーフレイムの姿は、どこか病的です。

 

 引用書籍は、世界的に著名な民話採集者ルース・マニング=サンダーズの

1冊で、各国に伝わる人魚の民話を収めた本です。

 その中の「大海原の王国」は、所謂「浦島太郎伝説」系の話で、

嵐にあって遭難した船乗りが、海の底の王国へ行き、人魚の妻をめとり、

幸せに暮らすも、好奇心から言いつけを破り、人間世界へ戻される、というもの。

人魚の妻が「さわっちゃいけないの!」と言ったにも関わらず、

「どうなるかみてやろう!」と、隠された像に触れた船乗りは、

凄い勢いで海を抜け、元いた自分の国の海岸まで吹き飛ばされました。

 両親は船乗りの帰りを喜びますが、おずおずと尋ねます。

「それで、また、ほかの船に乗るのかい」

すると船乗りは言いました。

「ほかの船に! とんでもない! 海はもうこりごりだよ!」

 船乗りは、大海原の王国で盛大なもてなしを受けました。

人魚の妻は、結婚する前も後も、船乗りに不利益になることをしていません。

 それなのに、船乗りは意図しない陸への帰還の後、

大海原の王国へ戻ろうとはしませんでした。

村の娘に恋をして、新しい妻と幸せに暮らしたのです。

 

 薄情な男です。

所詮、人魚はヒレのついた女。

一時はかわいく思えても、陸の女と同じ目で見られなかったのでしょう。

 人魚に悲恋のイメージがつきまとうのは、

セックスアピールに長ける人魚は、その実、思いやりに溢れた愛情関係から

ほど遠い存在である、という認識によるものだと思います。

人間の男は、人魚に下半身を熱くさせることはあっても、

心が熱くなることはないのだ、と。

 

 ひどい話です。

女の人魚が、男の人間を片っ端から海へ引きずり込むのも頷けます。

 一体どこの世界に、好きになった男とセックスだけしたい女がいるものか。

本当にほしい「まごころ」だけは、他の女のためにとっておいている男に

願うのは、「愛の再来」ではなく「身の破滅」でしょう。

 

 不吉な人魚のモチーフがあしらわれた、狂気の物語。

 ぜひ一度、お試しくださいませ。

 

【映画のキーワード】

#ホラー #モノクロ #実話