映画「ホーム・アローン」
”「おじいさんは、息子さんに電話をかけたほうがいいよ」
ケビンは言った。
「もし、息子が、わたしと口をきいてくれなかったらどうする?」
マーリーじいさんはきいた。
「少なくとも、そのことがわかれば、もうこわがることはなくなるよ」
ケビンは言った。”
書籍「ホーム・アローン」
トッド・ストラッサー 著
安岡真 訳
映画"Home Alone"
1990年
クリス・コロンバス 監督
いやはや、アメリカ人のクリスマスにかける意気込みには、
空恐ろしいものがありますな。
恋人と過ごすイメージのある日本とは違い、
家族で集まって過ごすイベントというのも、
実際のところしがらみが大きくて、時には厄介なことも多いんじゃないかしら。
仮に、アメリカにおけるクリスマスが、
日本における正月のような存在の行事だったとしましょう。
招く側は家の掃除やら客用布団の用意やらご馳走の手配などで大忙し。
一方、招かれる側も休暇の取得やら交通手段の確保やらお土産の準備などあり、
決して着の身着のまま、何もせずに招かれるなんてことはありません。
もちろん一人で過ごす方もいるでしょうが、どことなく肩身が狭い。
あんまり大っぴらに「私、年末年始はぼっちなの」なんて言わない気がします。
となると必然的に、人を招くし、招かれたら気が進まなくても
「ありがとう!お邪魔するね」などと笑顔で答えてしまう。
そして仕事から帰ってくたくたに疲れているのに、
旅行用の鞄を引っ張り出して、無言で着替えと歯ブラシを突っ込む――
――ね?
クリスマスって面倒でしょう?
クリスマス映画は数多くあれど、家族で観るならこれがおすすめです。
面白くってハラハラした後、最後はホロリとくるいい話。
見終わった夜は、「いやぁ~やっぱりクリスマスはいいよなぁ~」と言いながら
布団に入ること間違いなし。
アメリカはシカゴに暮らす大家族の末っ子:ケビンは、8歳の男の子。
今年のクリスマス、一家はパリでバカンスを楽しむ予定。
ところが、フライト当日の朝に寝坊して、家の中は上から下まで大騒ぎ。
慌てて家を出たため、忘れ物をして飛行機に乗ってしまいます。
忘れ物は――ケビン!!
クリスマス休暇と大雪と飛ばない飛行機が母親の行く手を阻む中、
一人で家に取り残されたケビンの元へ、強盗たちが忍び寄ってきた!
どうするケビン!?
コザクラは続編の「ホーム・アローン2」も好きですが、
「ホーム・アローン」に出てくるマーリーじいさんの話が大好きなので
こちらの作品を記事に取り上げました。
近所に一人で暮らすマーリーじいさんは、どことなく周辺の家々から浮いた感じ。
ケビンの家に集まった子どもたちからは、
ひょっとして身を潜めている元殺人鬼じゃないか、とうわさをしています。
実際にはそんなことはなく、ちょっとお顔が怖いだけのおじいさんです。
息子さんとケンカをして、孫娘と満足に会うこともできません。
ひとりぼっちでクリスマスを過ごしてきたマーリーじいさんに、
自身の癇癪が原因で家族が消えてしまったと思いこむケビンは、
引用文のようにアドバイスします。
息子さんに謝ることができない、と怖がるマーリーじいさんに、
自分から息子さんに歩み寄るように、とさとしています。
このシーンのケビンの表情が秀逸。
自分と同じ失敗で家族と会えないマーリーじいさんに、
自分を重ねて話しているのがわかります。
齢8歳にして、ここまで自分を分析して他者への助言に変換できますか?
賢すぎるだろう、この8歳。
しかしその賢い子どもといえど、誰もいない家に帰れば
眠る時は母親のベッドに潜り込みます。
映画の合間に挟まれるシーンで、
母親が何とか家へ帰ろうとする奮闘も相まって、切なくなります。
そしてラストでは、母親は家へ帰り着き、ケビンに謝ります。
もちろんケビンもそれを受け入れ、ケンカしていた母と息子は抱き合います。
窓の向こうでは、マーリーじいさんの家の前に人影が。
息子夫婦と孫娘が、クリスマスの朝に会いに来てくれたのです。
お互いに大切な人と仲直りできたマーリーじいさんとケビンは、
窓越しに微笑みあいます。
こんなに幸せなことってありますか?
これこそクリスマスプレゼントってものです。
【映画のキーワード】
#コメディ #ファミリー #天才子役