映画「素敵なサプライズ/ブリュッセルの奇妙な代理店」
映画"De Surprise"
2016年
マイク・ファン・ディム 監督
自分の死を自分で決めることは罪に値するのか。
回復の見込みのない傷病人が自らの死期を早める処置を施す「安楽死」は、
延命処置を施さず、肉体の滅ぶままに死を迎える「尊厳死」とは別物です。
本作の舞台であるオランダは医師による安楽死を合法としている国の1つです。
ところが、本作で積極的に自分の死を望む主人公:ヤコーブは健康体そのもの。
たとえオランダであろうと、自殺の手助けは違法行為です。
そんな彼の前に現れたのが、自然死を装った自殺幇助会社:エリュシオンでした。
父親の死がトラウマとなり、生きる望みを持てない彼は、
身辺整理を行い、エリュシオンに自身の死を依頼します。
彼が選んだ「死に方」は「サプライズ」――いつ、どんなかたちで訪れるか
わからない、というものでした。
サプライズ(驚き、意外、不意打ち)。
でも、「死」は基本的にサプライズです。
いつ訪れるのかはわからない。
医師の余命宣告は確率の問題です。
手相でわかるのはせいぜい何歳頃だという情報だけです。
生まれてくる時は十月十日でも、死ぬタイミングを自分で決めることは
自殺以外には不可能です。
そもそも生まれてくる時だってサプライズです。
スピリチュアルな話では「母親を選んで生まれてきた」といった類いの話が
ありますが、世の大勢にとって自分の存在は「気づいたらここにいた」という
ものでしょう。
人の生死は個人でどうこうできる範囲を超えています。
感覚としては天災・天恵に近い。
それが災いか福音なのかは人それぞれでしょう。
……と、まあこんな風に「死に方」について考えるとシリアスに
ならざるをえないのですが、本作はラブコメディです。
不思議なもので、安楽死が合法化されたオランダでは自殺幇助が
ラブコメになりますが、これが邦画だったらコザクラ同様シリアス路線に
なる気がします。
かる~い気持ちで鑑賞できます。
安心してお楽しみくださいませ。