映画と本の感想ブログ「映画の本だな」

いつかディズニー映画を英語で観るために頑張るブログ。

映画「オリエント急行殺人事件」

I can always call my lawyers long distance.

映画「オリエント急行殺人事件

 

”「ロング・デイスタンス?長距離電話のことをおっしゃってるのね」

「あ、それそれ、お国のイギリスでは、ええと”カバン電話”と言うんでしたかな」”

書籍「オリエント急行の殺人」

アガサ・クリスティー 著

山本やよい 訳

 

映画"Murder on the Orient Express"

1974

シドニー・ルメット 監督

 

 「長距離電話」という単語ひとつから相手の渡航歴を探り当てる――推理物として

言葉遣いから素性を推測するのは、珍しい手ではありません。

しかし、方言や外国語の知識がなければわからないネタであることも事実です。

 この作品で問題になった「長距離電話」という単語。

アメリカ英語ではlong distanceですが、イギリス英語ではtrunk callと呼びます。

原語で聞いても気づかなかったでしょうし、そもそも映画脚本では上記に引用した

原作本とは異なる言い回しなので、それを吹き替えた日本語訳では単に

「長距離電話」としかでてきません。

つまり、最後の種明かしの段階で主人公:ポアロが理由として持ち出してはじめて

「ああ、あのシーンでそう言っていたのか」と知ることになります。

 このあたりは翻訳用脚本を作成するにあたって、

謎解きの一部ではあるけど重要性は低いと判断されたのか、

それとも単に訳しにくいのでそのままにしたのかどちらかだと思います。

こういうことがあるから、原作ありきの映画は原作本を読みたい、と思うんですよね。

ところが翻訳では引用のように、原語を生かしつつも耳慣れない言葉になるため、

英語が堪能な方でないとやっぱりわからない仕様になっています。

 ……というわけで、コザクラは英語原語の映画をもっと楽しむために

英語の勉強を続けねばならないのです。

素晴らしい映画作品との出会いは、英語を勉強するモチベーションになっています。

 

 今回ご紹介する作品を原作とした映画としては、

2017年のケネス・ブラナー主演の映画の方が記憶に新しいかと思います。

コザクラもリアルタイムで鑑賞しました……が、今回取り上げるのは1974年の

アルバート・フィニー主演の方です。

個人的には名探偵ポアロの作品をはじめて鑑賞した映画なので、

イメージといえばこちら、フィニー演じるうさんくさい小男としての

エルキュール・ポアロなのです。

だから2017年のブラナーを観た時は正直、「ポアロがかっこよすぎないか?」と

違和感があったほど。

今では慣れましたし、演じる数だけ色んなポアロがいるものですが、

原作を読んでいても、やはり1974年のポアロのドライさが

この作品には似合うと思います。

 原作のポアロは緊張の中、冷静に推理していきますが、映画の雰囲気はいっそ

コミカルに感じるほど明るいもので、ラストの大団円感ではその結末の意外性も

相まって、「こんなに明るくていいのか!?」とびっくりしました。

 今でも3年に1回は観たくなる映画ですが、特に観たくなるのは犯行シーンです。

ラストの喜びあふれる光景とは真逆な犯行シーンの映像は映画オリジナルのもので、

青白いライトに照らされた犯人の顔と言葉を忘れることができません。

賛否両論の結末であることは承知の上で、それでもここまで至った犯人の

苦悩は途方もなく大きくて、観る度にちがった感想を抱きます。

 

 殺人事件の舞台となったオリエント急行は、この作品をより魅力的にしています。

トルコからフランスへ向かう寝台列車で、それも1等車両となれば豪華連欄。

洗面台付きの寝台付き客席や車窓の風景を楽しみながら食事をする食堂車など、

フィクションの世界でなければお目にかかれない旅の一景もお楽しみの一つです。

 乗り物酔いするコザクラには難しい乗り物ですが、列車の旅には興味があります。

常時揺れていて絶対落ち着かないだろうし、なんなら食事もし辛いし節水も

心がけなくちゃならないだろうし……と結構めんどくさそうなイメージです。

それでも乗りたい!

乗ってみたい!!

ましてやポアロやクリスティーの時代ではないので、早いとこ乗っておかないと

寝台列車全線廃止になりかねません。

コロナウイルスの影響で国内消費が豊かで多彩な方向にシフトチェンジするなら、

列車の旅自体を旅の目的として寝台列車の復活もワンチャンありそうなんですけどね。

まずは稼がねば。

 

【映画のキーワード】

#ミステリー #クライム #蒸気機関車