映画と本の感想ブログ「映画の本だな」

いつかディズニー映画を英語で観るために頑張るブログ。

映画「ショパン 愛と哀しみの旋律」

Well, who would take chocolate, you or me?

映画「ショパン 愛と哀しみの旋律」


”身なりを整え終えたころ今度は一杯のチョコレート(ココア)が

 運ばれてくるが、それは食の細いショパン

 少しでも栄養をつけさせようというサンドの心づかいだった。”

書籍「音楽家の伝記 はじめに読む1冊 ショパン

ひのまどか 著

 

映画"Chopin: Desire for Love"

2002

イェジ・アントチャク 監督

 

 ピアノにもクラッシックにも明るくなくても、名前だけはわかります。

ショパン――幸薄そうな若い男性。

ピアノの――詩人…?

 ポーランドに生まれ、ついに祖国に帰ることなくパリで39年の生涯を終えた彼の

人生を描いた映画「ショパン 愛と哀しみの旋律」は、

その実ショパンの伝記というよりショパンとサンドの映画です。

ジョルジュ・サンドというフランス女性に関して、前知識ゼロで映画に臨んだ

コザクラには、サンドという女性が少々うっとうしく感じられました。

史実はどうであれ、映画で描かれるサンドという女性は、傍にいて安らぎを

感じさせてくれるというよりは、刺激を与えてくれるように感じられたからです。

もし私がピアノ1台に向かって、情熱のこもった作業をするなら、

刺激よりかは安らぎの方が必要だと思いました。

 

 引用したショパンの伝記は、2006年に刊行された書籍の増補改訂版です。

映画ではうるさく感じられた年上のお節介焼きな異国の恋人が、

まごころを持って愛情深く細やかに見守るパトロンに認識を改めるのだから、

ノンフィクションは解釈が難しいと思います。

物語の導き手によって、登場人物の印象はたやすく変わります。

 サンドが悪女に描かれやすいのは、

ショパンの死のタイミングの悪さもあってのことだと思いますが、

サンドがショパンの死を早めたのか、はたまたサンドがショパンの生を

長らえさせたのかは、誰にもわからないことです。

はっきりしているのは、ショパンの人生と彼の生み出した作品にとって、

サンドの影響は計りきれず、彼女なしに彼を語ることはできません。

この人なくしてかの人の人生を語れまい――ショパンの人生において、

彼女は唯一そのような絶対的な存在だったことを感じさせます。

 

――とは言うものの、映画の中のサンドは愛情深くも怖い女にも描かれています。

実の娘とショパンを取り合うという、昼ドラ的展開の中で

印象的な小道具のひとつが、件のココアです。

 ココアを運ぶメイドの期待に満ちた表情と軽い足取り、

横から盆を奪い去るサンドの娘の眉のつり上がる様と敵意、

そして階段の上から現れる陰のような女:サンド。

ショパンの体調を気遣ってサンドが用意した一杯のココアを

誰が運ぶかで3人の女性がもめるシーンは、

線の細い美青年だったらしいショパンには、

実際に近しいことが起こっていただろうな、と思われました。

 ショパンの好みと栄養価を考えた結果、ココアが選ばれていたのでしょうが、

中性ヨーロッパで媚薬とされ、

現在も人間に恋愛感情を引き起こすのかどうか論証賑やかなチョコレートが、

ショパンと彼を取り巻く女性たちとを仲介していたと思うと、

運び手になろうと躍起になる女性陣の気持ちがわかります。

ココアじゃなくても運びたかったでしょうが、

ココアなら「俄然他の女にはやれん!」という気持ちになりますよね。

 最終的にサンドがココアを運びますが、

苛立つサンドを見てもショパンの顔にはいかなる色も浮かびません。

ショパンの女性陣への感心の低さも相まって、現実味がある愛憎劇の一幕です。

 

 ところで、書籍にはQRコードが印刷されており、

登場する楽曲の冒頭30秒を視聴できるというお試しサービスがついています。

ボタン1つですぐに再生できたら、曲を探すのがもっと早くて助かるため、

サービスが改変されることを希望しています。

 

【映画のキーワード】

#天才 #マヨルカ島 #大人の恋愛

 

 

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