映画と本の感想ブログ「映画の本だな」

いつかディズニー映画を英語で観るために頑張るブログ。

映画「パディントン」

PLEASE LOOK AFTER THIS BEAR.

映画「パディントン

 

”「これから、うちで、わたしたちといっしょに暮らすのよ。」と、

 ジュディはいいました。

 「この人、南米から移民してきたの。

 ひとりぼっちで、どこへも行くところがないんですって。」”

書籍「くまのパディントン

マイケル・ボンド 著

松岡享子 訳

 

映画"Paddington"

2014

ポール・キング 監督

 

 子どもの頃読んだ本に登場する魅力的なお菓子たち――たとえば?

たとえば――ぐりとぐらのカステラ。

たとえば――不思議の国のアリスの「わたしをたべて」と書かれたクッキー。

たとえば――ハリー・ポッターのバタービール。

 それらも素敵だけど、やっぱりこれは外せません。

パディントンマーマレード

 

 暗黒の地:ペルー(気を悪くされたらごめんなさい。あんまりな形容詞だけど、

実際の文章でもこのように呼ばれているのです)よりやってきたみなしグマの

パディントンは、単身船でロンドンにやってきます。

彼の大好物はオレンジでつくったマーマレードで、

風変わりな帽子の下にはお腹がすいた時のために、

いつでもマーマレード・サンドイッチをしのばせています。

 ジャムといえばイチゴとブルーベリーしか知らなかった子どものころの

コザクラにとっては、口に入れるより早く、

本の世界で出会った未知の食べ物でした。

 さらに、みかんと言われてカリフォルニアの太陽を浴びたジューシーな

オレンジではなくちゃぶ台の上のかごに盛られた蜜柑を思い浮かべていたので、

その味は謎そのもの。

本をとじて母親にかけより、「マーマレードってなに!? 食べてみたい!!」と

せがみ、スーパーであっけなく手に入ったはじめてのマーマレードの感想は

それはもう散々なもので、一気にあこがれがさめたことを覚えています。

ジャムは甘いものだと信じきっていた小学校一年生のコザクラには、

はじめて食べたオレンジの皮の苦みが強烈で、

パディントンがおいしそうにマーマレードをほおばるシーンの先入観も相まって、

期待を裏切られる格好となってしまったのです。

 あれから月日が流れ、コザクラはマーマレードのおいしさが

わかる大人になりました。

 それでも最初の一口の記憶は薄れることなく、文字通り「苦い」思い出として

残っています。

 

 パディントンの映画は現在までに2作公開されており、

そのどちらも細かいところまでジョークにあふれて、ついついホロリと泣けて、

最後はあたたかい気持ちになれる映画です。

原作本はメインシリーズが10冊を超え、さらにシリーズ外や絵本にも裾野を

広げています。

 映画はオリジナルストーリーですが、映画1作目では原作1作目で描かれる

パディントンと彼を受け入れたブラウン一家との出会いがふくまれています。

パディントン駅でブラウン一家に見つけられたみなしクマは、

英国人風の名前として、

出会った駅にちなんで「パディントン」と名付けられるのです。

ガラス屋根が印象的なこの駅は、

イギリスが首都ロンドンのパディントン地区にあり、

駅構内にはパディントン銅像が設置されています。 

 

 作者のボンド氏はパディントンのイメージを

自身が子どものころに見た戦時中のテレビニュースから得ています。

疎開先の駅舎でたたずむ大勢の子どもたちと、彼らが首から下げていた名札。

原作でもパディントンはペルーから密航し、たどり着いたパディントン駅で

受け入れ先を探すべく、首から名札を下げていました。

 パディントンが湿っぽくあわれな雰囲気ではないので、

子どものころは気にとめなかったのですが、大人になった今読み返すと、

たった一人で見知らぬ駅へやってきた小さな子どもが

家を探しているのかと思うと、切なくなります。

マーマレードパディントンの大好物ですが、

ひとりぼっちで駅のホームに立つ彼に瓶詰めのマーマレードを持たせたのは、

切ない立ち姿の幼子を勇気づけようとする

作者からのエールだったのかもしれません。

 

 甘いだけでなく、ちょっぴり苦みもあるマーマレード

映画を見たら、無性にサンドイッチが食べたくなりました。

マーマレードをたっぷり塗った、手作りのマーマレードサンドイッチを。

 

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#ロンドン #家族 #移民