映画と本の感想ブログ「映画の本だな」

いつかディズニー映画を英語で観るために頑張るブログ。

映画「ファースト・ポジション 夢に向かって踊れ!」

I love ballet so much.

映画「ファースト・ポジション 夢に向かって踊れ!」

 

”このコンクールの特色は、こうした採点によって順位を決めていく

 ヴァリエーション審査とは別に、スカラシップの審査が行われる点です。

 これは、各学校の教師がクラス・レッスンを見て、直接、

 自分の学校へ迎え入れる奨学生を選ぶ審査。

 たとえ入賞することができなくても、将来性が認められた生徒には

 チャンスが与えられる仕組みになっています。”

書籍「バレエ・コンクール パーフェクト・ガイド クララ編」

株式会社新書館 発行

 

映画"First Position"

2011

ベス・カーグマン 監督

 

 小・中学生向けのバレエ雑誌「Clara(クララ)」。

これは、株式会社新書館から発行されている月刊雑誌です。

同雑誌に寄せられた読者からのお便りの中に、

バレエ・コンクールについての質問が増えてきたことから、

コンクールに焦点を当てて出版されたのが、

今回引用させていただいた書籍です。

 バレエ・コンクールと一口に言っても、

主催者・規模・審査基準・コンセプトは、コンクールによって様々です。

日本全国でたくさんのコンクールが開催されており、

毎月どこかしらで、何らかのコンクールが開かれています。

 海外コンクールの予選が、日本国内で行われることもあります。

今回ご紹介する映画で取り上げられている

「ユース・アメリカ・グランプリ」(YAGP)もその1つです。

このコンクールは、毎年ニューヨークで開催され、

国籍不問の9~19才の若年層を対象としています。

なお、予選は世界各地で行われるため、開催場所に合わせて名称がつけられます。

2022年開催の日本予選だと「YGP 2023 日本予選 」となります。

 

 映画は6人の子どもたちに焦点を当て、

彼らが挑んだ最終選考までの道のりを、簡潔にまとめています。

 賞を獲った子もいれば、奨学金に受かった子もいる。

その裏では、入団を逃した子もいるし、バレエそのものを辞めた子もいる。

若い彼らの将来性を判断するコンクールだから、

彼らの人生のスタートからちょっと行ったところで、

厳しい現実を突きつけられることになります。

 

 「人生はやり直しがきく」

 「新しいことに挑戦するのに、遅すぎるということはない」

 「今日が人生の一番若い日」

 

 失敗を励ましたり、背中を押してあげたい時に、

つい上記のような台詞を口にしてしまいます。

 しかしその一方で、

「今、この瞬間の結果が、その後の人生を大きく変える」ような

「撮り直しなしの一発勝負」が、人生には存在します。

さらには、心も体も未熟な内に重大な決断を迫られることもあります。

後になって人生を振り返った時に「あの時挑戦しておけば……」と思っても、

すでに挑戦する資格を失ってから思い至るものです。

時は戻らない。

諦めるしかありません。

 バレエのプロを目指すなら、幼い時から莫大な時間をバレエに費やすのは、

必要であり、至極当然のことです。

練習なしにプロになるなど、ありえません。

けれどもプロの門は狭く、バレエに捧げた時間やお金に見合うだけの報酬や

成果を得られるかどうかは、行き着くところまで行かないとわかりません。

 ところが、その「行き着くところ」とはどこなのか。

どこまでやったら、自分の素質がわかるのか。

どれだけやったら、自分の可能性を見極められるのか。

誰に、そんなことを判断できるのか。

自問自答の苦しい時間が、続きます。

 

 「好きこそ物の上手なれ」――

――何事も、好きだから練習する。練習するから上達する。

  したがって、好きなことほど上達が早い、という意味のことわざです。

 

 どんなきっかけがあったにしろ、コンクールを目指すレベルまで

バレエを続けてきた事実の裏側には「バレエが好き!」という

子どもたちの気持ちがあると思います。

これから成長していく上で、様々な問題から、

バレエを辞める子もでてくるだろうと思います。

 でもどうか、バレエを辞めたとしても、

バレエを嫌いにならないでほしいな、と思います。

もしくは、その時は忘れたとしても、

「踊るって楽しい! バレエって楽しい!」と思ったことを

いつか思い出してくれたらいいな、と思います。

 

 コザクラが好きなバレエは、「観ていて楽しいバレエ」。

「私はこんなに踊りが好きなの!」と全身で表現するバレエに、心惹かれます。

 

【映画のキーワード】
#ドキュメンタリー #ファミリー #ダンサー

 

 

 

ディズニー・アニメ映画「レミーのおいしいレストラン」

Surprise me!

ディズニー・アニメ映画「レミーのおいしいレストラン」

 

”フランス料理は、フランスの人にとっては、「いつもそこにあるもの」でした。

 その「当たり前にある料理」という存在に、

 いつも押し流されそうになっていました。

 ぼくにとってのフランス料理は、

 意識して突進していかないとわからないものだったから。”

書籍「調理場という戦場 『コート・ドール』斉須政雄の仕事論」

斉須政雄 著

 

映画"Ratatouille"

2007

ブラッド・バード 監督

 

 引用した書籍は、東京港区のフレンチレストラン「コート ドール」の

シェフ:斉須政雄さんの自伝かつ仕事論をまとめた1冊。

2002年初版の「ほぼ日ブックス第2弾」にあたり、

ほぼ日刊イトイ新聞」の糸井重里さんが監修された本です。

 20代前半でフランスに渡り、フランス料理の修業をした斉須さん。

6店舗目にして、最後の修行先「ランブロワジー」は2019年の

テレビドラマ「グランメゾン東京」で「パリの三つ星レストラン」として

紹介され、実際にお店が登場し、注目を集めました。

 

 引用書籍の発売から5年後の、2007年に公開されたディズニー映画

レミーのおいしいレストラン」は、フランス料理界を舞台に

料理人になる夢を見る主人公の奮闘を描いた、現代が舞台の作品です。

 その内容は――際どいセーフを狙ってアウトになった――そんな感じです。

 アウト1つ目。

わかりやすい恋愛劇や派手な冒険譚ではなく、

一般人が夢を叶える話を真剣につくったら、地味になった。

 アウト2つ目。

丁寧に描写しているため、上映時間が112分と

(ディズニー映画にしては)長くなってしまった。

 アウト3つ目。

飲食店にネズミは、やっぱりまずかった。

 

  スリーアウト!

  バッター、チェンジ!!

 

 ……………………でも、好きなんだよなァ、この作品。

はじめて観た時、コザクラは高校生だったのですが、

「楽しい映画ではないな」との感想を抱きました。

もっとドンパチする映画の方が好みだな、とその時は思いましたが、

あまりに異質な雰囲気と見栄えのしないテーマ性が、深く印象に残りました。

 大人になって仕事をして、色んな人を見て、その後で映画を見返した時に、

「ああっ!」と色んなシーンの違和感が腑に落ちました。

そこからはもう、大好きな作品です。

 この映画の面白さは、フランス映画に通ずるものがあります。

舞台がパリだから、というのもありますが、

「人生で起こる劇的な瞬間を、爆発やパレードやミュージカルで表現しない」

という点が、フランス的な感性に近いように感じるからです。

フランス映画がアメリカ映画に比べて大衆受けせず、レビューに

「オチがわからない」

「意味不明」

「結局、主人公はどうなったんですか?」

と書かれるのはおそらく、この辺の感性の違いだと思います。

良い悪いではなく、そういう表現を好ましいと思う下地が

観る人にあるかどうかが、問題になってきます。

 でも改めて見直すと、本作はアメリカ映画らしく――もっと言えば

ディズニー映画らしく、ハッピーエンドでまとめられています。

きっちり第80回アカデミー賞(長編アニメーション映画賞)を

受賞しているあたり、「やっぱディズニーはプロだな」と思います。

 アウト3つ取っても、試合には勝っていやがる。

 

 映画の登場人物の中で、一番人気なのが、多分この人。

辛口料理評論家のアントン・イーゴ。

主人公のレミーと、もう一人の主人公であるリングイネが、

かわいい見た目なのに反して、一見すると、魔法や呪術を使って二人を

窮地に追い込むヴィラン(悪役)と思わせるような、怖い外見です。

 しかしその見た目とは裏腹に、料理に対する並々ならぬ想いは

真剣そのもので、そこに善悪は介在しません。

訳あって評論家を失業した後の、ラストの姿のギャップも相まって、

非常に萌え……いえ、ツンデレ……いや、おいしいキャラクターです。

ちなみに、ネット上で「ディズニー世界の海原雄山」扱いされている様子。

(かいばらゆうざん。漫画「美味しんぼ」のキャラクター)

 

 ツンデレがかわいいのは、フランスもアメリカも日本も変わらない――

そんな世界の約束を教えてくれた映画です。

 ぜひ一度、ご賞味くださいませ!!

 

【映画のキーワード】

#ディズニー #グルメ #アニマル

 

 

 

映画「4分間のピアニスト」

映画「4分間のピアニスト

 

映画"Vier Minuten"

2007

クリス・クラウス 監督

 

 ラストのピアノ演奏シーンで有名な、ドイツの映画。

ピアノの鍵盤だけでなく、台を叩き、弦を直接弾き、足でリズムをとる。

その奏法は、およそ「ピアノの演奏」と聞いて想像する姿とはかけ離れており、

観客を困惑させます。

 しかし、破壊的なスタイルの演奏方法とは裏腹に、

奏でられる音楽にはまとまりがあり、一つの曲として違和感なく認識されます。

激情がほとばしるかのような演奏をしながらも、

「雑音」にならず、「音楽」として観客の耳に届きます。

 主人公:ジェニーの破滅的な性格を表すかのような、独特の演奏と音楽です。

 優れた才能を持ちながらも、その才能が呼び寄せたようなトラウマを抱え、

心と体が縛り付けられている彼女の、運命の数奇さを感じます。

きっと彼女は、ピアノによって癒やされ、同時に、

ピアノに触れることでトラウマを甦らせ、傷つき続けているのだと思いました。

 

 タイトルの「4分間」とは、コンクールに出場して、

壇上で演奏する時間のことを指しています。

 本来、刑務所にいる筈のジェニーを連れ出し、

コンクールに出場させたクリューガー女史は、

刑務所内でピアノ講師をしていました。

ジェニーのピアノの才能に気づいたクリューガー女史は、

激昂しやすいジェニーの性格を非難します。

 

 「破滅するのは簡単。

  どうしてなの?

  それだけの才能をなぜドブに捨てるの」

 

 クリューガー女史は第二次世界大戦中に、

愛する女性(同性愛者のため)をナチス・ドイツ兵に処刑されるという、

残酷な別れを経験していました。

若い彼女にとって、この出来事は永遠に癒えぬ傷となって心に残り、

おそらく誰にも打ち明けたことはありませんでした。

 しかし、才能あるピアニストでありながら、

自分も相手も粗雑に扱うジェニーに向き合うことで、

半ば無理矢理、その過去は暴かれます。

そして最後には、自分からジェニーに過去の傷を開示することになったのです。

 

 4分間の演奏。

 そして、それが終わった後の、奏者のお辞儀。

 祖母と孫ほどにも歳が離れた2人の女性の、言葉を介さない会話を、

どうぞお楽しみくださいませ。

 

 

4DXを体験してきた!

4DXを体験してきた!

 

 4DXを体験してきました~!

 近場の映画館には無いので、例によって映画のために遠出しました。

往復の交通費で映画が1本観られるのにィ~…という気持ちも無きにしも非ず。

でもここは、ぐっと我慢。

さらには、通常の観賞料金にプラスして4DX鑑賞料金も支払います。

財布には大ダメージ。

 

 でも!!

 凄かった!

 というか、あんなに揺れるとは思わず、結構怖かった(笑)

 

 4DXとは、上映作品のシーンに連動する環境効果技術です。

座席の振動、背部への衝撃、耳元から噴射される風や水、

劇場全体のフラッシュ、煙の演出などで、

映画の場面や状況にマッチした効果を付与し、臨場感を高めてくれます。

 導入時期や劇場によって効果が異なることもありますが、

上記の例は大体の4DXシアターに備わっています。

最新型だと、「雪」や「熱風」の効果もあるのだとか。

そのシアターで、ぜひ「アナと雪の女王」を鑑賞してみたいですね。

 2009年に韓国で誕生した4DXは、2013年に日本に導入されて以来、

その数を増やし、2022年4月時点では65の映画館に導入されています。

しかし、所在する都道府県の数は29。

さらには、大都市の映画館に複数導入されているので、

地方だとコザクラのようにアクセスしにくく、

利用されたことがない方も多いのが現状だと思います。

 

 今回はじめて利用した4DXですが、

アクションがメインの映画を鑑賞する際は、ぜひ利用したい、と思う程、

素晴らしい体験でした。

 ただ一方で、凄い揺れますから、初回鑑賞には向いていない、とも感じました。

コザクラ的には、振動、風、フラッシュ、それから衝撃(背中への衝撃。

これがくるとわかっていても「うおっ」ってなっちゃうんですよ)に

びっくりし過ぎて、ストーリーを追いたい時には邪魔かな、と考えます。

 

 4DXはアトラクションです。

映画を鑑賞したいなら、通常上映へ。

わくわくどきどきしたいなら、4DXがオススメです!

映画「海底二万マイル」

The sea is everything-- an immense reseivor of nature, where I roam at will.

映画「海底二万マイル

 

”食器も上品で、しゅみのいいものばかりだ。

 ただ、どの食器にも、きまった文字がきざまれてあった。

 ここにそれを正確にうつしておこう。

  "MOBILIS IN MOBILI" N

 ラテン語で、”動くもののなかの動くもの”という意味だ。

 とすると、これは、この潜水艦を意味している。

 N(エヌ)は、船長の名前の頭文字だろう!”

書籍「海底二万マイル

ジュール・ベルヌ 著

南本史 訳

 

映画"20000 Leagues Under the Sea"

1954

リチャード・フライシャー 監督

 

 東京ディズニーシーが千葉県浦安市に開園したのは、2001年のこと。

今からおよそ21年前の出来事です。

 当時、小学生だったコザクラは「これは凄いものができる!」と

新パークオープンのニュースに興奮したのを覚えています。

運良く家族・友達と一緒に新パークへ足を運ぶことになり、

地方からの日帰り旅行だったので、滞在時間はそれほど長くなかったのですが、

短い時間を遊び倒し、とても充実した一日を過ごしました。

 その時、一番印象に残ったのが「知っているキャラクター・作品の多い

ディズニーランドと違って、全然知らない世界が展開されている」ということ。

行く前は漠然と「ディズニーランドの別バージョン」がディズニーシーだと

考えていましたが、実際に行ってみて、「全く異なるテーマパーク」だと

認識を改めました。

 

 そう思わせたのは、パークのシンボル的存在、プロメテウス火山です。

さらに、テーマポート(テーマ毎に分かれたパーク内のエリア)の一つ、

「ミステリアスアイランド」の根底にあるジュール・ヴェルヌの作品群も

前述の火山同様、個別の世界観を支えています。

 でもこれ、ちゃんとディズニー作品に関連していたんですよね。

 今回取り上げた映画は、ヴェルヌの小説をウォルト・ディズニー

実写映画化した作品です。

原作も映画も知らないコザクラには、ピンとこなかったわけですが、

歴としたデイズニー作品だったわけです。

 ……が、あれから21年を経た現在でも、映画の古さからか知名度は低く、

お世辞にもディズニーの人気作品というわけではありません。

おまけに、近年ではテーマポートの方向性が変わってきたらしく、

より知名度の高い作品とキャラクターに、ネモ船長関連施設が

場所を譲っているという情報をネット上で見かけました。

十年以上、ディズニーシーに足を運んでいないので、

自分の目で確認したわけではないのですが、

ジュール・ヴェルヌの作品群を下敷きにした一連のテーマ性が、

現在では失われているのなら、ちょっと悲しいです。

 

 ミステリアスアイランドには、ここでだけ通じる挨拶があります。

「モビリス!」とクルーに声をかけると、

笑顔で「モビリ!」と返ってきます。

これらは引用した「海底二万里」からの言葉で、クルーは左手を右肩に当てて、

N(エヌ)のポーズをとります。

これは、「海底二万里」に登場するネモ船長の頭文字を表わしています。

 そもそも、パークで働く従業員を「キャスト(出演者)」と呼称する

ディズニーリゾートにおいて、「クルー(乗組員)」と呼ばれるのは

ミステリアスアイランドだけです。

 ディズニーの世界観にありながら、どこか異質で特別な雰囲気のある

ミステリアスアイランド。

より多くの方に楽しんでもらうために、テーマの変更や展示の変遷は

行われて当然です。

気付かないだけで、ミステリアスアイランド以外のテーマポートも

少しずつ変わってきている筈です。

 

 でも、でも~~~!!!

ジュール・ヴェルヌの世界観をディズニー風に落とし込んだ

レトロフューチャーのテーマポートが跡形も無く消えてしまうのは、

正直言って、寂しい!! かなり!!!!

 見せ方を変えながらも、ひっそりとでいいから、

少しは残ってほしい、と願っています。

いつか一緒に行く誰かに、見せてあげたいから。

 

 皆もっと、映画を観てください(懇願)。

原作そのままではないし、どう考えてもアロナックス教授よりも

銛打ちのネッド・ランドの方が主役張っている作品ですが、

愛と復讐に生きたネモ船長の姿が、印象的な映画なんですよ。

 ジェームズ・メイソンの神演技がキラリと光る作品。

生前のウォルト・ディズニーの野望と、

ジュール・ヴェルヌの挑戦を感じる映画でした。

 

【映画のキーワード】

#冒険 #ファンタジー #潜水艦

 

 

 

映画「アトランティス」

 

映画「アトランティス

 

映画"Atlantis"

1991年

リュック・ベッソン 監督

 

 北海道の旭山動物園が、動物の姿を見せることを目的とした「形態展示」

ではなく、動物の生活を見せる「行動展示」に着手したのが、1997年のことです。

この映画は、それより6年前にフランス・イタリアで制作されています。

作中でペンギンが泳ぐ様を、水中からの視線で撮影しているところを見ると、

映画公開当時、観客は「凄ェ! ペンギンってこんな風に泳いでるの!?」と

思ったに違いない、と思うのです。

 公開から30年以上経ち、映像の古さは多少目につくものの、

その美しさは損なわれず、今でも鑑賞に値する希有な作品であります。

 

 冒頭を除いて、台詞やナレーション無しで進むこの作品は、

水中の映像と音響のマリアージュを楽しむようにできています。

フランス出身の作曲家:エリック・セラの提供した音楽が

全編に渡って使用され、ストーリー性のないこの作品に

起伏と色彩を与えています。

映像と音楽の融合の先で、新たな芸術作品としての価値の創造を目指している

あたり、本作のコンセプトには、ディズニーの「ファンタジア」に

通ずるものがあるように感じました。

 やっていることがシンプルな分、制作陣のセンスがそのまま露わになる

という、恐ろしい作品なんですけど、さすがベンソン監督。

 センスがいい!!(小並感)

本作の3年後に公開された「レオン」でも、カット毎の美しさが

際立っていましたが、その美的感覚の鋭さは、本作でも十分発揮されています。

 コザクラ的には、ウミヘビのシーンが好きです。

蛇と聞けば、すぐにあの手の音楽を想像しちゃいますが、

期待通りの音響と、気持ちいいくらいの音ハメで、

見ていて本当に心地良い出来上がりなのです。

 

 心と体を休ませたい、癒やしたい――そんな夜にぴったりな1作です。

 照明を暗くして、海の底から見上げる気分で、ご覧くださいませ。

 

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#ドキュメンタリー #芸術 #ヒーリング

 

 

ディズニー・アニメ映画「アトランティス 失われた帝国」

Plato, 360 B.C.

ディズニー・アニメ映画「アトランティス 失われた帝国

 

”・・・不運なる一昼夜の間に、

 アトランティスは海中深く没し姿を消した

哲学者プラトン B.C.360

※ 映画冒頭の引用より

 

映画"Atlantis: The Lost Empire"

2001

ゲイリー・トルースデール/カーク・ワイズ 監督

 

 問題作……というか、「問題を呼び込みやすい作品」ですね、これは。

今回取り上げた映画は、スタジオジブリの「天空の城ラピュタ」や、

テレビアニメ「ふしぎの海のナディア」など他の映像作品との

類似点が取り沙汰される傾向にあるディズニー作品です。

 それが理由かはわかりませんが、

ウォルト・ディズニー生誕100周年記念作品として大々的に予告された割には、

その後、デイズニーの表舞台に立たされていない作品です。

まぁ、ディズニーはマイナーな(売れなかった)作品に出番を与える

経営方針ではないだけかもしれませんが。

 念のために申し上げますと、

他作品との類似点の多さからパクリ・盗作が疑われるのは、

この作品が最初でもなければ最後でもありません。

デイズニー映画の「ライオン・キング」と手塚治虫の「ジャングル大帝」が

似ていることは、日本のみならずアメリカからも声があがっておりますが、

現在までに裁判になった、とか、会社どうしで揉めた、という話は聞こえてきません。

本作に関しても、ビジネスの場で話し合いがあったわけではないようです。

 一視聴者としては、制作陣がそういう波風立てない態度でいるなら、

他作品との関連性はひとまず無視して、作品として楽しみたい、と思っています。

 それに……こう言っては何ですが、

似てるなら似てるなりに、楽しめるものです。

同じようなテーマや設計であればこそ、制作陣が一番見せたいシーンや

キャラクターの成長ポイントなどがはっきり違って見えてくるので、

上述の似ている他作品との相違点を洗い出し、比較することができます。

そういう意味では、もしかしたら、

大人の目線でこそ、楽しめる作品かもしれません。

映像作品の楽しみ方は、ストーリーを追いかけるとか、

キャラクターを推す以外にも、色々な方法があると思っています。

たまには、こういう考えながら作品を観るのも、いいじゃありませんか?

 

 この作品はジュール・ヴェルヌの小説「海底二万里」と、

ギリシアの哲学者プラトンの著作を題材にした作品です。

 主人公:マイロ・サッチは、探検家の祖父を持つ言語学者兼地図制作者。

両親を亡くし、考古学で飯を食べていけない彼は、

博物館のボイラー室で一生を終えることにならないよう、

博物館の援助を得てアトランティス発見の旅に出ようとしますが、

理事会のメンバーは「おとぎ話には付き合えない」と一蹴します。

落ち込むマイロが、肩を落として家に帰ると、謎の女が待ち構えていました。

彼女に導かれて旅の援助者に出会い、意気揚々と潜水艦に乗り込むマイロ。

しかし伝説を辿る道のりは厳しく、出発して早々に探検隊の大多数は

海の底に沈み、残されたメンバーはそれでも前に進むことを決意します。

 

 2000年代に入ると、ディズニー作品からミュージカル要素(登場人物が、

歌で心情や状態を表現する)が無くなっていきます。

本作も、歌や踊りは一切無し。

 主人公の性格が割と鈍感なので気付きにくいのですが、

シリアスな局面が長く続き、作品全体からは、暗い印象が拭えません。

モブ・メインを含めて、人が死ぬシーンも描かれています。

ディズニー作品の中では、年齢層をやや上に設定してある作品かと思われます。

 ジュール・ヴェルヌの作品を取り入れていることや、

空を飛ぶ古代飛行機の存在など、ディズニーシーとの親和性が高い作品です。

いつか、テーマパークに取り入れられる日を願っています。

 

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#冒険 #スチームパンク #長野博

 

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